株式会社JCU

JCUテクニカルレポート バックナンバー一覧

FPC戦略プロジェクト

総合研究所
システム開発部
高徳 誠 Makoto KOHTOKU / 中丸 弥一郎 Yaichiro NAKAMARU / 篠﨑 裕規雄 Yukio SHINOZAKI

 

営業本部
新規事業営業部
浅野 敬祐 Keisuke ASANO / 山田 賢一 Kenichi YAMADA / 川崎 智弘 Tomohiro KAWASAKI

はじめに

薄くて自由に折り曲げることのできるフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)は主にスマートフォンに多用され、近年では車載用途、ウェアラブル端末やIoT(Internet of Things)を支えるセンサー用途など、その適用範囲は拡大している。それに伴いFPC自体の軽薄短小化、回路の微細化、低コスト化が望まれている。現在のFPC製造には安価なラミネートタイプやキャストタイプのフレキシブル銅張積層板(以下、FCCL。銅箔とポリイミドフィルムを張り合わせたFPCの主要部材)が用いられているが、微細回路形成や薄型化には不向きである。市場要求である更なるFPCの軽薄短小化を実現するためには、メタライズタイプのFCCLを用いることが必要であるが、フィルム上に金属膜を形成するスパッタリングのコストが高く、FPC自体のコストも高価となってしまうため、より安価な材料と製造プロセスの出現が望まれている。

当社は高価なスパッタリングの代替技術として、安価な無電解めっき法を用いたFCCL製造プロセスELFSEED(エルフシード)を製品化し、2010年には本プロセスを用いた現行のメタライズタイプのFCCLと同等性能でかつ低コストのFCCLの作製に成功している1)。また、ポリイミド(以下、PI)フィルムにあらかじめスルーホールを形成し、本プロセスを用いて、表、裏、スルーホール内部を同時にメタライズする先孔工法によって、FPCの軽薄短小化と大幅な工程削減による低コスト化を実現できることを報告2)しており、当社顧客のFPCメーカーによって2014年より枚葉方式による量産が開始され、現在も順調に稼働中である。前報告3)では、さらなる生産性向上を目指してロール to ロール方式による無電解めっき装置の開発状況について報告している。

また、各種デバイスの高性能化に伴う配線・ビアの小型化を受けて、当社はこれまでFPCの樹脂微細エッチングに対応したプラズマ装置を開発してきた。複数枚の基板を同時に処理できるバッチ式装置で自動搬送機構を備え、高品質処理が可能な枚葉式装置を販売した実績がある。しかし近年、FPCの生産コストダウンを目的として、FCCLをロール形状のまま加工して生産する需要が高まっている。同時にめっき・露光現像技術が年々向上し、FPCメーカーはロール to ロール方式の装置を導入して微細配線加工を行っている。

当社ではFPCの微細化、低コスト化要求に早急に対応すべく、2015年より「FPC戦略プロジェクト」を立ち上げてロール to ロール設備の開発に取り組んできた。本報告では前報告3)で紹介したロール to ロール方式で作製したFCCLの性能評価結果と、今回新たに開発したロール to ロール方式によるプラズマ装置について報告する。

ロール to ロール式無電解めっき装置

FPC市場で求められているPIフィルムの厚さは12.5μm~35μmである。特に厚さ12.5μmのPIフィルムは非常に薄く取扱いが難しく、これまでの搬送技術ではフィルムが破断してしまうため、ロール to ロール方式によるめっき加工が困難であった。現在開発中の装置ではフィルムの破断、変形なく搬送、めっき処理が可能となっている(図1)。


FPC市場で求められているPIフィルムの厚さは12.5μm~35μmである。特に厚さ12.5μmのPIフィルムは非常に薄く取扱いが難しく、これまでの搬送技術ではフィルムが破断してしまうため、ロール to ロール方式によるめっき加工が困難であった。現在開発中の装置ではフィルムの破断、変形なく搬送、めっき処理が可能となっている(図1)。


FCCLの密着強度

ELFSEEDプロセス2)を用いてロール to ロール方式によりPI上にNiシード層を0.1μm、電解Cuめっき層を18μm形成してFCCLを作製し、ピール強度を測定した(図2)。PIフィルムには東レ・デュポン社製Kapton-EN、宇部興産社製Upilex-SGAを用いた。どのメーカー、厚みのPIにおいても常態で0.9~1kN/mの回路として十分なピール強度を得ることができた。

ELFSEEDプロセス2)を用いてロール to ロール方式によりPI上にNiシード層を0.1μm、電解Cuめっき層を18μm形成してFCCLを作製し、ピール強度を測定した(図2)。PIフィルムには東レ・デュポン社製Kapton-EN、宇部興産社製Upilex-SGAを用いた。どのメーカー、厚みのPIにおいても常態で0.9~1kN/mの回路として十分なピール強度を得ることができた。

回路形成

電解Cuめっき層を2μm形成したFCCLを作製し、セミアディティブ法による回路形成を行った。使用したプロセスを表1に、回路形成後のSEM観察写真を図3に示した。当社は回路パターンレジスト形成を除く工程において、ELFSEEDプロセスに好適化したプロセスを用意しており、最小で20μmピッチの回路パターン形成に成功した。

電解Cuめっき層を2μm形成したFCCLを作製し、セミアディティブ法による回路形成を行った。使用したプロセスを表1に、回路形成後のSEM観察写真を図3に示した。当社は回路パターンレジスト形成を除く工程において、ELFSEEDプロセスに好適化したプロセスを用意しており、最小で20μmピッチの回路パターン形成に成功した。

ロール to ロール式プラズマ装置(TAIKAI PST-R)

今回開発したプラズマ装置TAIKAI PST-Rシリーズの外観を図4に示した。

今回開発したプラズマ装置TAIKAI PST-Rシリーズの外観を図4に示した。

デスミア処理とはレーザー、ドリルによるTHV・BVH穴開け加工時に発生するスミア(樹脂残渣)を除去する工程である。プラズマ処理は、主に酸素などの反応ガスを励起状態にして、有機物であるスミアをCOxやH2Oなどに分解することでスミア除去を行う。
図5にプラズマ処理有無のBVHの断面写真を示す。スミア残りは、層間接続工程において導通不良、密着力不足などの不良原因となる。プラズマ処理は反応性ガスを使用するため、微細部への処理が可能であり、近年の微細化、高機能化にも対応できる。
一般的にはビア径が70~100μm程度以下の場合、吸湿性材料や一部の新材料に対してはプラズマデスミアが必要不可欠となっている。

デスミア処理とはレーザー、ドリルによるTHV・BVH穴開け加工時に発生するスミア(樹脂残渣)を除去する工程である。プラズマ処理は、主に酸素などの反応ガスを励起状態にして、有機物であるスミアをCOxやH2Oなどに分解することでスミア除去を行う。
図5にプラズマ処理有無のBVHの断面写真を示す。スミア残りは、層間接続工程において導通不良、密着力不足などの不良原因となる。プラズマ処理は反応性ガスを使用するため、微細部への処理が可能であり、近年の微細化、高機能化にも対応できる。
一般的にはビア径が70~100μm程度以下の場合、吸湿性材料や一部の新材料に対してはプラズマデスミアが必要不可欠となっている。

本プラズマ装置の特長

当社が開発した装置の特長を以下に示す。
1)高いエッチングレート
2)低温処理
3)新規開発電源
FCCLは薄く熱容量が小さいため、リジット基板よりも基板表面の温度上昇勾配が大きい。強い放電を当てると基板温度が急激に上昇するため、基材が変形や伸縮することがある。これを防ぐには、プラズマ出力を落とし、基板へ到達する熱電子を減らす必要があるが、同時にエッチングレートも低下する。本装置は、従来の水冷電極のプラズマ処理区間を長くして、比較的低出力のプラズマ放電を行うことで、低温処理とエッチングレート向上を可能にした。
当社基材(ポリイミドクーポン)を使った試験では、エッチングレート1.93μm(3m/min搬送時)、面均性±17%、基板温度95℃(Max)という良好な結果を得ている。ロール to ロール式の本装置では、搬送中のFCCLが若干振動するため、プラズマ放電にも影響を与える。このため、この装置に最適な周波数と波形を持つプラズマ電源を開発して、本機に搭載している。

当社が開発した装置の特長を以下に示す。
1)高いエッチングレート
2)低温処理
3)新規開発電源
FCCLは薄く熱容量が小さいため、リジット基板よりも基板表面の温度上昇勾配が大きい。強い放電を当てると基板温度が急激に上昇するため、基材が変形や伸縮することがある。これを防ぐには、プラズマ出力を落とし、基板へ到達する熱電子を減らす必要があるが、同時にエッチングレートも低下する。本装置は、従来の水冷電極のプラズマ処理区間を長くして、比較的低出力のプラズマ放電を行うことで、低温処理とエッチングレート向上を可能にした。
当社基材(ポリイミドクーポン)を使った試験では、エッチングレート1.93μm(3m/min搬送時)、面均性±17%、基板温度95℃(Max)という良好な結果を得ている。ロール to ロール式の本装置では、搬送中のFCCLが若干振動するため、プラズマ放電にも影響を与える。このため、この装置に最適な周波数と波形を持つプラズマ電源を開発して、本機に搭載している。

おわりに

今後さらに高まるFPC需要に対して生産性の高いロール to ロール式装置の開発、薬液プロセスの対応は極めて重要である。開発中の本装置で作製したサンプルは電子回路基板として十分な密着性と回路形成性を有し、当社の回路形成プロセスの適用により高精細FPCの製造が可能であることを確認した。現在多くの顧客に評価いただいているところで、今後これらの評価結果をフィードバックし、早期に装置とプロセスを一体で市場に投入できるよう努めたい。

また、プラズマ装置に関しては、すでに当社研究所にて販売機と同等の性能を有するデモ機を導入している。各種サンプルワークを行っているところであり、より一層の市場定着を目指して努力して行きたい。

参考文献
1)高徳 誠、中丸 弥一郎、濵田 実香、松本 守治、林 伸治:JCUテクニカルレポート、88号(2010)
2)高徳 誠、福本 ユリナ、中丸 弥一郎:JCUテクニカルレポート、97号(2015)
3)高徳 誠、中丸 弥一郎、篠崎 裕規雄:JCUテクニカルレポート、99号(2016)
その他記事

JCUテクニカルレポート 100号 2016年8月