価値創造ストーリー

価値創造プロセス図

価値創造プロセス図

事業活動報告/営業部門

営業部門は、薬品営業と装置営業から構成されています。
薬品営業は販売のみならず幅広い知識と経験から
お客様の課題を解決するための技術的な提案を行い、
装置営業は薬品のみでは対応できない課題を解決するために、
薬品性能を最大限に発揮できる装置の提案を行います。
そのことにより、お客様にご満足いただけるよう努めています。

取締役常務執行役員 営業本部長 荒明 文彦
取締役常務執行役員 営業本部長荒明 文彦

中期経営計画達成に向けた活動

中期経営計画「Next 50 Innovation 2nd」の基本方針である「コア事業の強化」では、各地域のマーケットニーズに沿った営業活動の実施に向け、重要地域間における連携をより強固なものにしました。薬品営業では、海外子会社との協力体制を強化し、組織的で効率的な営業・販売活動を可能にするグローバル販売戦略を推進しました。各地域で顕在化したニーズに対し、最適な対応ができる人材を現地に派遣し、海外子会社と協力して営業活動を行うことで、着実に成果を挙げています。装置営業では、薬品性能を最大限に引き出す装置の開発に力を入れていて、装置営業から顧客への提案力や課題解決力の向上に努めています。主軸だった装飾・機能分野向け装置に加え、電子分野向け装置の拡販が進展し、大型案件の獲得にも成功しました。こうした取り組みにより、中期経営計画は目標達成に向けて順調に進んでいます。

新たな市場動向の把握

短期および中長期の両面から、新たな市場動向の把握に取り組んでいます。短期的には、お客様への徹底したヒアリングでニーズをつかみ、保有技術の応用や技術の組み合わせなどを提案し、早期に対応することで顧客満足度の向上に努めています。高度な技術導入が必要な場合は、総合研究所のCS部門とも連携して対応を行います。

中長期では、既存のお客様に加えて、各業界の先端企業ともコネクションを構築してヒアリングを実施しています。また、装置営業はお客様の投資状況を読み解くことができるため、数年先を見据えた情報収集が可能です。こうして得た情報を、総合研究所、経営戦略室と共有して将来の技術動向の把握に努めています。

現在は、カーボンニュートラルへの意識が高まっていることから、このニーズに対し迅速に対応することがJCUグループの価値向上につながると考え、グループ一体で新たなニーズに対応する開発戦略と販売戦略を進めてまいります。

グループ間の情報共有によるお客様支援

JCUグループの成長を支えてきた要因の一つが、グローバルネットワークです。この強みをより活かすため徹底して取り組んでいるのが、グループ間の情報共有です。グループ内のあらゆる情報を各現地法人の責任者とエリア責任者(北米1名・アジア3名)で共有し、エリアを超えた一体感を強化しています。

この取組みが最も効果的に機能しているのが、多国籍企業に対する支援です。国境を越えたビジネスを展開するお客様の情報を、全地域の責任者が共有することで地域差をなくし、JCUグループとしての同一品質・同一レベルのサービス提供を実現しています。また、お客様が新たな地域でビジネスを開始されるときには、サポート実績のある営業スタッフがその地域のグループ企業へ赴き、連携してお客様のビジネスの立ち上げを支援します。JCUグループならではの強みを活かすことで、お客様の満足と信頼を獲得し、さらなる関係性の強化につながっています。

グローバル展開によるサポート体制の確立

JCUグループは現在、世界11ヵ国で事業を展開しています。その重要な施策の一つが、サポート体制の早期確立です。例えば、2000年以降、表面処理業界の成長が著しかった中国は、数年後に世界中の企業が進出するだろうと考え、いち早く進出しています。海外展開当初は、「日本流のサポートが受け入れられるのか?」という不安もありましたが、現場のラインを安定稼働させるための手厚いフォローは評判も良く、当社のシェア拡大につながりました。このように、市場の未来を見越して早期に体制を整備した結果、お客様が進出されたときに十分なサポートを提供することができたことも、海外の事業展開を成功させた要因になっています。

また、近年は新製品の販売が海外からスタートするケースが増えてきており、そのような場合は、製品の開発に携わったスタッフが現地に赴き、駐在員や現地営業スタッフを支援する新たなサービス体制の整備も進めています。

現在はタイやベトナムなど、東南アジアに注目が集まるなか、今後の市場拡大を睨んで海外展開のさらなる拡充を進めています。その一つとして、2022年9月には、マレーシアに現地法人を新設しました。マレーシアは今後、半導体ビジネスの成長が予測されています。また、人口拡大を背景に急成長するインドにも、すでに拠点を設置しています。早期の体制整備で、信頼できるビジネスパートナーというJCUグループの企業価値創造に取り組んでいます。

世界で活躍する営業人員の育成

「現地営業スタッフ育成」と「グローバル人材育成」を中心に実施しています。JCUグループの営業で大きな特長になっているのが、技術営業としてお客様の現場を理解し、運用の最適化と課題解決に取り組むことです。“背中を見て育つ”ではありませんが、私自身先達の背中から多くを学び成長してきました。我々が引き継いできたものを現地のスタッフにも継承させていくことが非常に重要であると考えています。現地営業スタッフの育成で取り組んでいるのは、この技術営業に必要な知識とノウハウの伝承で、日本人スタッフを派遣して教育を実施しています。

一方で、グローバル人材の育成は、JCUグループの未来に向けて、今後もビジネス拡大に必須な取り組みです。現在は、日本で活躍する営業スタッフを対象に実施しています。国内で習得した知識・経験を海外で活かし、新たな視点から仕事の面白さややりがいを実感してもらうとともに、さらなるスキルアップの機会を提供しています。また、海外業務を経験した社員からの話を聞く機会を設けるなど、世界をまたにかける活躍を動機づける環境づくりも進めています。

今後の販売展開に向けて

JCUの強みの一つとして大切にしている提案力やサポート力、この根幹を支えているのが個々のスキルと連携です。営業スタッフのスキルの向上については、ベテラン営業スタッフによるOJTをはじめ、日々進化する技術や知識を習得するため、総合研究所スタッフによる勉強会を実施しています。このほかにも数々の教育システムを体系化し、幅広い知識が効率的に習得できる環境を整備しています。

そしていま、私たちが見据えているのは、環境を意識した製品および競合他社を凌駕する製品です。スキルアップした営業スタッフの現場対応力と業界をリードする研究開発力により、ESG・SDGsに則った、そしてお客様の期待に応える製品をいち早く市場に投入したいと考えています。

事業活動報告/開発部門

研究開発型企業JCUグループの根幹を支えているのが、
総合研究所です。情報収集から製品開発までを担う開発部門と、
JCUグループの強みであるカスタマーサポート(CS)を
担当する部門が、新製品の開発や営業部門のサポートを通じ
企業価値向上に寄与
しています。

専務取締役専務執行役員 総合研究所長 大森 晃久
専務取締役専務執行役員 総合研究所長大森 晃久

「世界一の製品づくり」を目指して

総合研究所では「世界一の製品づくり」を目指して、研究開発に取り組んでいます。中期経営計画の基本方針であるコア事業の強化の中でも、総合研究所では開発戦略の一つとして環境を意識した製品開発を行っています。

表面処理技術が今後も豊かな社会に貢献するためには、環境の中でもカーボンニュートラルへの寄与が特に重要なテーマです。そこで、「自然と寄り添う新たな技術」という視点からテーマを選定し、早期にカーボンニュートラルへ寄与する世界一の製品開発を進めています。

開発戦略におけるもう一つの取り組みが、競合他社を凌駕する製品開発です。直近の実績としては、半導体パッケージ基板向け薬品があります。高性能な半導体では微細な配線形成技術が必要になるため、めっきやエッチングなどの表面処理薬品にも高い性能が求められます。JCUグループは、これらの高度化するニーズ応え続けた結果、技術力の高い製品を生み出し、着実に採用実績を増やしてきました。

今後に向けては、生成AIなどに用いられる次世代半導体のニーズが高まっていることから、構造がより一層複雑になり、半導体製造の後工程で高度な表面処理技術が必要になると予測されています。JCUグループでは、蓄積した豊富な技術や経験と新たな知識を組み合わせ、この新領域でも競合他社を凌駕する付加価値の高い製品開発に取り組みます。

薬品性能を最大限に引き出す装置開発

表面処理技術に対する要求は、年々高まっています。このニーズに応える解決策の一つが、高機能な装置(Machine)と高性能な薬品(Chemical)を融合して高度なパフォーマンスを提供するMC一体の取り組みです。JCUグループは、業界でも数少ない装置事業と薬品事業をともに展開している企業です。この特長を最大限に活用することで、高度な要求に応え続けています。

具体的には、総合研究所内に装置技術スタッフを配置し、装置・薬品双方の観点から、表面処理技術の性能向上をテーマに研究開発を推進しています。この成果を、装置開発を手掛ける装置技術部と共有し、これまでにない構造・機能の実現で、薬品性能を最大限に引き出す装置を開発します。今後もお客様のニーズに応える高度なパフォーマンスの実現に向け、MC一体の取り組みを強化していきます。

高付加価値製品の開発への取り組み

総合研究所の強みは、無機化学や有機化学をはじめ、電磁気学や流体力学など研究開発に必要な様々な知識と技術を蓄積し、それらの技術を融合して、新たな技術を創出できることです。このため、次世代技術の動向を把握するためのマーケティングは、高付加価値製品の開発を行うJCUグループの企業価値創造を支える重要な役割を担っています。

研究開発部門のマーケティングとしては、主にアカデミック分野の専門家とのネットワークや学会・コンソーシアムへの参画を通して、最先端の市場動向や技術動向に関する情報を収集しています。さらに、次世代を見据え、営業部門がビジネスの最前線、経営戦略室が業界全体の動向のマーケティングを実施。こうした3部門のマーケティングで得られた情報をもとに、総合研究所では開発ロードマップを作成し、次世代を見据えた研究開発を推進しています。そして、ニーズが顕在化したとき、いち早く技術や製品が提供できる体制を築いています。

そしてもう一つ、高品質な製品開発をリードしているのが、総合研究所のCS部門です。CS部門が担当する業務の一つは、お客様への技術サポートです。JCUグループ製品を導入したお客様の状況を理解し、最適運用に向けた条件設定をアドバイスし、ときにはトラブルシューティングにも携わります。そして、現場で習得した知識とスキルを開発シーンにも展開しています。新製品の試作品が完成した際は、CS部門が性能評価を行い、改良のアドバイスはもちろん、ときにはNGを出して開発を初期段階まで差し戻すこともあります。JCUグループが業界で確固たるポジションを築けているのは、こうした開発体制を確立し、確実に運用しているからです。

最先端技術と専門知識の強化

技術が日々進化する中、製品開発には「何が必要な技術なのか」「今後どういった技術が重要になるのか」を見極めることが重要です。

最先端技術の習得については、各専門領域において最先端の研究に取り組む大学の研究室にコンタクトを取り、先生方から直接指導を仰ぐこともあります。また、マーケティングと同様に、当社事業領域に関連する国内外の学会での発表や各種コンソーシアムへの参画を通じて、先端技術に携わる人たちとの交流を深め、必要な知識の習得に努めています。

個人レベルではスキルマトリックスを活用して、日常レベルからスキルアップを推奨しています。外部講習会をはじめ、所内で実施する勉強会や討論会などへの参加で、専門知識を伸ばす環境の整備も進めています。

新たな国内拠点から新技術創出へ

今後の企業価値創造に向けて重要な役割を担うのが、2025年4月に竣工予定の熊本事業所(仮)です。熊本事業所には研究棟も建設され、最新の設備や技術を取り入れた研究開発を進めていきます。その一つが、材料開発の効率向上を目的としたMI(マテリアル・インフォマティクス)の導入です。MIは機械学習を用いて膨大な実験データを解析することで、期待する性能が出そうな化学構造や組成を設計する手法であり、技術進歩が著しい昨今の環境では必要不可欠です。DX(デジタルトランスフォーメーション)化の観点からこれまでに蓄積した知見、ノウハウのデジタル化および活用を推し進めることで、今後も競争力を高めていけると考えています。特に注力する技術領域としては、半導体関連の分野であり、新たな熊本事業所(仮)ではそれら分野を中心に研究開発を行っていくことを検討しています。自動車の自動運転や高速データ通信の新たな規格である6Gの実用化など、今後も半導体需要の増加が見込まれます。技術進化の早い半導体関連の領域において、これまでのJCUグループになかった新たな技術と製品の開発を通して、さらなる企業価値創造に取り組みます。