テクニカルレポート

SED対応光沢硫酸銅めっきプロセスCU-BRITE SED / CU-BRITE SED2、および硫酸銅めっき用SED実験装置

電子分野

総合研究所 電子技術開発部 内田 千紘 UCHIDA Chihiro 鈴木 陽平 SUZUKI Yohei 佐藤 麻里 SATO Mari 安藤 俊介 ANDO Shunsuke
      解析技術部 青木 鉄也 AOKI Tetsuya 岸本 一喜 KISHIMOTO Kazuki
      装置技術部 第1設備課 松倉 崇 MATSUKURA Takashi

はじめに

電気めっきは部材に耐食性や装飾性、機能性を付与する技術であり、装飾部品や電子部品など多くの分野で使用されている。特に近年では電子機器の急速な発展に伴い、部品製造における要素技術として重要な役割を担っている。しかし、装飾部品や電子部品が完成するまでには多岐にわたる工程や排水処理が必要とされ、環境への負荷が懸念される。めっき技術を継続して使用するには、工程の簡略化や排水の削減を通して環境負荷を低減することが望まれる。
トヨタ自動車株式会社では、環境負荷を低減する新しい技術として、スタンプ式でめっきを行う固相電析法(Solid Electro Deposition, 以下、SED)を提案している。当社はトヨタ自動車株式会社からこの技術供与を受け、SED対応光沢硫酸銅めっきプロセスおよび装置を開発した。
本稿ではSED対応光沢硫酸銅めっきプロセスおよび硫酸銅めっき用SED実験装置(以下、SED実験装置)について報告する。

SED技術について

SEDとは、優れたカチオン交換性を有する固体電解質膜をめっき対象物に接触させ、通電することで対象物にスタンプのように金属を電析させる方法である。SEDは対象物をめっき液に浸漬させることなく、固体電解質膜が接触した部分にのみ成膜できる。従来のめっき電解槽に浸漬する方法に比べ、少量のめっき液で金属成膜が可能となり、環境負荷を低減するめっき方法として活用が期待される。

SED対応光沢硫酸銅めっきプロセス

当社はS E D 対応光沢硫酸銅めっきプロセスとして、CU-BRITE SED(以下、CB-SED)およびCU-BRITE SED2(以下、CB-SED2)を開発した。

特長

CB-SEDおよびCB-SED2は、高電流密度(7A/d㎡, 16A/d㎡)により短時間で光沢Cuめっき被膜を形成できる。図1に各めっきプロセスについてSED実験装置を使用してめっきした結果を示す。添加剤の含まれていない硫酸銅基本液や、プリント基板用の当社硫酸銅めっきプロセス(以下、従来プロセス)で成膜した場合は無光沢のCuめっき被膜となるが、CB-SEDおよびCB-SED2は光沢のあるCuめっき被膜が得られる。

図1 SEDによる成膜結果

また、CB-SEDおよびCB-SED2は連続稼働において安定した性能を維持できる。図2に連続稼働に対するCuめっき被膜外観を示す。200Ah/Lまでの連続稼働試験において、Cuめっき被膜外観に変化がなく、安定した光沢Cuめっき被膜が得られることを確認できた。

図2 連続稼働に対するCuめっき被膜外観

さらに、本開発プロセスは添加剤成分を含めた全成分の分析管理が可能である。

使用条件

表1に使用条件を示す。CB-SEDおよびCB-SED2の使い分けについては、要望される成膜速度に応じて選択する。

表1 使用条件

SED実験装置

SED用のめっき処理装置として、SED実験装置を開発した。図3に外観写真、図4に構成図を示す。

図3 SED実験装置の外観写真
図4 スタンプヘッドの構成図

特長

  • ヘッドの透明化により良好な視認性を確保
  • めっき液の少量化を実現
  • クローズドシステムの採用により、外部からの異物混入を抑制

仕様

装置サイズ[mm]巾1800×奥行1000×高さ2000
めっきプロセスCB-SED/CB-SED2
陰極(品物)[mm]100×100×厚さ1.0
固体電解質膜サイズ[mm]200×200
データ出力三菱MX Sheet

ユーティリティ

電源3相200V、50Hz または60Hz、容量25KVA
給水純水使用

作業手順

表2に作業手順を示す。

表2 作業手順

おわりに

SED対応硫酸銅めっきプロセスCU-BRITE SEDおよびCU-BRITE SED2は、硫酸銅めっき用SED実験装置の特長を生かし、短時間で光沢Cuめっき被膜を形成することが可能で、装置の側面ではめっき液の使用量を抑えるとともに、クローズドシステムであることから、環境負荷を大幅に低減することが可能なプロセスである。
今後、本プロセスの特長を生かして、電子部品などの製造や、そのほかにも幅広い分野への市場展開を行い、持続可能な社会の実現に貢献する所存である。