価値創造&事業戦略
事業活動と戦略
事業活動と戦略
JCUグループは1968年4月に設立以来、装飾・防錆めっき技術から発展した様々な表面処理技術の提供を中心に、自動車、エレクトロニクスなどの産業の成長を支えてきました。JCUグループは中長期の方向性として「2035年に目指す姿」を「独自の強みを最大限に活かし、環境や社会に貢献することで、社会とともに成長し続けるグローバル企業」と定め、日々変化し続ける社会環境に対応しつつ、常に技術・サービス体制を強化していくことで、社会価値と経済価値の追求による企業価値向上を目指します。
薬品事業の概要と戦略
薬品事業では、国内および海外市場において表面処理薬品の開発・製造・販売、関連資材の販売を行っています。表面処理薬品は装飾・機能分野、電子分野の2つに分かれており、基盤領域に位置付けている自動車部品、プリント基板向け薬品で得られた収益を原資に成長分野、特に電子分野の中でも、重点領域と位置付ける半導体パッケージ基板、次世代領域と位置付けている半導体アドバンスドパッケージの2つの領域に、積極的に投資を行うことで、自社の成長につなげてまいります。
現在では11カ国13拠点で事業を展開しており、薬品事業の海外売上高比率は8割近くまで成長を遂げました。グローバルに連携した迅速で手厚いサポート体制を維持しつつ、積極的に投資を行い、質の高い製品を継続的に開発することで国内外のお客様から高い信頼を得られるよう、引き続き努めてまいります。
電子分野
電子分野では、スマートフォン、PC、タブレット、サーバーなどの高機能電子機器に使用される高密度プリント基板および半導体パッケージ基板向けの表面処理薬品を中心に開発・製造・販売しています。近年では当社主力製品である、ビアフィリング硫酸銅めっきプロセス「CU-BRITE」シリーズに加え、半導体関連向けに新ブランド「TIPHARES」を立上げ、より難易度の高い半導体領域における製品の開発も進めています。
今後に向けては、高度化する要求性能に適応した製品開発を継続的に取り組み、製品ラインナップの拡充および「TIPHARES」シリーズの早期市場定着を目指します。

装飾・機能分野
装飾・機能分野では、主に自動車部品や水栓金具などに使用される表面処理薬品を開発・製造・販売しています。対象とする分野においては、環境保全に向けた取り組みが進み、規制が厳格化するにつれ、めっき薬品も環境に対応した製品の開発が欠かせない状況となっています。
当社では、有害な6価クロムを使用しないプロセスをはじめ、窒素化合物や有機フッ素化合物(PFAS)非含有の製品を開発しており、環境負荷を軽減する製品をトータルプロセスで提案できる体制を整えてきました。
今後に向けては、環境対応型製品の開発を継続的に取り組み、製品ラインナップの拡充および早期市場定着を目指します。

装置事業の概要と戦略
装置事業では、設計から製造、販売まで手掛けており、国内外問わず販売しています。完成度の高い全自動表面処理装置として、自動車業界をはじめ電子関連業界など、あらゆる分野で採用されています。
当社設立以来の考え方である「装置と薬品の一体販売」に基づき、薬品の研究開発に装置部門が参画することで、 薬品だけでは達成できない技術的課題を装置機構の側面から検証し、薬品性能を最大限に引き出す差別化された装置の開発、販売を推進しています。
めっき装置の他、薬品との親和性が高い、プラズマ技術を用いたプリント基板のエッチングおよび洗浄装置など、高密度化製造技術に対応した装置の販売も行っています。

JCU VISION 2035 -1st stage-|成長分野への投資

営業部門
営業部門
「JCU VISION 2035」の売上目標達成に向け、
既存分野の収益性強化、新市場の開拓、販売体制の
さらなる強化を推進します

営業本部長荒明 文彦
中期経営計画における営業部門の役割
「JCU VISION 2035」では、中期経営計画の最終年度となる2027年3月期に売上高310億円、さらに長期的なビジョンとして2035年3月期では500億円という目標を設定しています。目標達成に向け、営業部門では既存事業を伸ばしつつ、新しい市場にも積極的な拡販を推し進めていきます。
既存事業の収益性確保に向けた施策
既存事業は、自動車などに使用されるプラスチックをめっきで加飾したドアハンドルやエンブレムなどの装飾部品とプリント基板や半導体パッケージ基板などの電子部品が主なターゲットです。
装飾・機能分野は近年、自動車のEV化やデザイントレンドの変化により、めっきによる加飾は減少傾向にあります。しかしながら、環境に対する意識が高い分野でもあるため、環境負荷を軽減する製品は大きなビジネスチャンスになります。通常プラスチック上の装飾めっきでは10以上の工程が必要で、その最初の工程と最後の工程で有害な6価クロムを使用した処理が行われます。この6価クロムは、以前より環境負荷物質として規制の対象になっていますが、その性能の高さから代替の進まない物質でした。当社では今年、この6価クロムをすべての工程から除外した装飾めっきプロセスを開発しました。その他、窒素化合物非含有の無電解ニッケルや有機フッ素化合物(PFAS)非含有のクロムめっき用ミスト防止剤、非染料系の光沢硫酸銅など各工程に環境対応型製品を取り揃え、トータルプロセスで提案できる体制を整えております。お客様からのお問い合わせも多数いただいており、今後市場定着に向けて力を入れていきます。
一方、電子分野では個人消費の停滞や半導体の在庫調整の影響などにより昨年は厳しい事業環境からのスタートとなりましたが、プリント基板を中心に需要は回復してきており、まだまだ回復の鈍い半導体パッケージ基板も、データセンターなどAI関連の需要やスマホ、PCの買い替え需要などの増加により、今後市場の活発化が予想されます。高度化する要求性能に対応する新製品も続々と製品化が進んでおり、これからもシェアの拡大に力を入れていきます。
JCU VISION 2035 -1st stage-|数値目標

新ブランド「TIPHARES」による市場開拓
近年、加速度的に進んでいた配線の微細化は物理的な限界に達しつつあり、新たな配線形成や接合技術を用いたパッケージング技術が求められています。これらは半導体アドバンスドパッケージと呼ばれ、現在様々な手法が検討されている分野です。
2023年11月に発表した新ブランド「TIPHARES」シリーズは、この半導体アドバンスドパッケージ分野を含む次世代半導体をターゲットとした製品ブランドです。半導体アドバンスドパッケージを製造する工程には当社が得意とする硫酸銅めっきやエッチングの技術が不可欠であり、当社は新製品を揃えて新市場への参入を目指します。
「TIPHARES」シリーズは、現在数製品が製品化されておりますが、今後もさらなる製品ラインナップの拡充を図ります。また、すでにホームページや展示会を通じて注目を集めており、お問い合わせもいただいています。当社では、お客様の要望に沿った製品を提案し、技術面のフォローもしながら実績づくりを進めています。
当社の技術は元々半導体と親和性が高いものですが、半導体の技術進化は日進月歩で情報がなにより重要です。営業スタッフ各員の知識向上はもちろん、当社研究所や関連企業と連携し、常に最新情報を取り入れながら市場への早期定着を目指します。
強みを活かした販売体制の強化
お客様に密着し、提案力、課題解決力が信頼されてシェアを拡大してきたのが当社の技術営業です。その強みを継続するため、スタッフの継続的な育成を行っています。お客様との密接な信頼関係を築くうえで、担当している分野の製品知識はもちろんのこと、薬品や装置のような他部署との連携やお客様の抱える課題を解決するためのアドバイスなど、様々な知識、現場技術が必要になります。このような経験豊かな営業スタッフがときには研究所のスタッフと連携し、お客様の生産ラインの稼働をサポートしてきたからこそ、現在の実績につながっています。こうした活動を支える人材の育成は最重要課題です。定期的な研究所員による研修の他、若い社員に向けては、定例報告会などを通じた成功体験の共有を教育の一環として実施しています。また、個々の社員の経験則や情報をデータベース化および営業部門で共有化することで、人材育成につなげる取り組みもしています。今後はデータ活用も念頭に、取り組みを継続していきます。
JCUが提案する環境負荷低減プロセス

開発部門
開発部門
成長分野へ積極的に投資を行いながら、
研究開発能力の強化、開発速度の向上を狙い、
当社の持続的・安定的な成長を支えます

総合研究所長※大森 晃久
※インタビュー当時の役職
研究開発における当社研究所の方向性
今回、中期経営計画で当社研究所のあるべき姿を提示させていただきました。キーワードは「創造」「戦略」「情報」の3つです。1つ目の「創造」は“これまでの経験と多種の理論を融合”することで、効率的な開発が可能となり、他社にはできない革新的な製品を創造することを目指します。2つ目の「戦略」は“持続的成長をもたらす技術戦略”を構築していくことが重要であり、マーケティングに基づき開発の目標を明確にすることは、研究所員の意識を共有することにつながり、成長のための推進力が生まれます。3つ目の「情報」は“効果的な情報の収集と活用”であり、お客様のみならず国際学会や大学など、多角的に情報を収集し、確度の高い技術動向を事業に落とし込むことが可能となります。
これら3つのキーワードに加え、研究所員が当事者意識を持って行動することで高い技術力が生まれます。当社の研究所では「卓越した技術力によって市場をリードし続ける研究所」をあるべき姿と設定し、実現に向けて目指していきます。
研究開発|当社研究所のあるべき姿

先を見据えた成長分野への積極的な投資
今回の中期経営計画においては、電子分野の中でも著しい進化を遂げている半導体アドバンスドパッケージおよび半導体パッケージ基板を成長分野として位置付けています。今後も大きな市場の成長が見込めますが、求められる薬品性能も非常に高度な内容になってきており、当社が今後も持続的に成長を遂げるためには、成長分野において商権を獲得していく必要があります。そのために、人材や研究設備に積極的な投資を行う方針を定め、今後3か年で売上高研究開発費率を6.5%まで引き上げることとしました。
直近では、2025年12月に熊本県益城町に製造棟と研究棟からなる熊本事業所が竣工予定となっており、総投資額は土地代を除き、約114億円となることを見込んでいます。既存の神奈川県の総合研究所ではこれまで通り装飾・機能分野、電子分野の全領域での研究開発を担います。熊本事業所には、最新の設備を取り揃えた研究所を併設する予定としており、半導体関連を中心に開発を進めることで、成長分野の中でも最先端の研究開発をこれまで以上に加速させていきます。
高付加価値製品および次世代技術の研究開発
当社開発部門では、昨年発表した新ブランド「TIPHARES」シリーズをはじめ、当社の既存市場である半導体パッケージ基板向けの硫酸銅めっきやエッチング、自動車の装飾部品向けの環境負荷低減プロセスなど各分野で新製品を開発しており、直近2年間で14もの新製品を開発しました。これら新製品を開発する際、市場のニーズにマッチした高付加価値製品や次世代技術製品の創出につなげるため、社内での開発ロードマップを作成し、マーケティングと並行しながら、技術動向に合わせ都度修正し開発を進めています。また、すでに導入しているMI(マテリアルズ・インフォマティクス)を活用した研究開発も、今後ますます短期化する開発期間に対応するためには重要度が増しており、今後も継続的に強化していく方針としています。
持続的・安定的な成長に向けた研究所の取組み
これまで当社は、海外展開とともに既存市場のシェア拡大を図ることで成長を遂げてきましたが、今後は既存市場を確保していくとともに、新分野にも挑戦していくことが必要です。当社にとって、その根幹を支えるものが研究開発となります。既存製品の性能向上はもちろん、新市場向けの製品創出など、より一層開発に力を入れるとともに、MIやシミュレーションソフトを活用した開発の効率化、研究所における人材、知財・無形資産の有効活用のための投資なども積極的に行い、持続的・安定的に成長できる企業を目指していきます。
研究開発|研究開発投資

財務・資本戦略
財務・資本戦略
10年先も継続的に成長していくために
「成長投資」と「株主還元」を推進し、
さらなる企業価値向上を目指します

経営戦略室長井上 洋二
持続的かつ安定的な成長のために
この度の長期ビジョンは10年後を見据えており、長期目標として売上高500億円を掲げています。1st stageから3rd stageと大きく3段階に分けて取り組みを実施していく計画となっており、初めの1st stageにおける3か年は資本政策に基づいた「成長投資」と「株主還元」を積極的に実行し、数値目標を着実に達成できるよう推し進めていきます。長期目線では、積極的に投資や株主還元を行い、資本効率向上を目指しつつ、当社の持続的、かつ安定的な成長につなげていきます。
成長戦略としては、自動車部品やプリント基板を対象とする基盤領域において得られた資源を成長分野である半導体アドバンスドパッケージを中心とした次世代領域および半導体パッケージ基板を中心とした重点領域に配分して成長のサイクルを回していきます。
特に次世代領域である半導体アドバンスドパッケージにおいては、本中期経営計画期間中に営業、拡販活動に力を入れ、次期中期経営計画期間にはしっかりと収益化できる環境づくりを推進します。
財務戦略|キャピタルアロケーション(FY25~FY27 3か年累計)

熊本事業所を軸とした成長投資
JCU VISION 2035 -1st stage-では、3か年で200~250億円程度の営業キャッシュ・フローを見込んでいます。そのうち、約半分程度を投資額として活用する予定としており、そのなかでも多くを占めるのが当社として過去最大の投資となる熊本事業所になります。本事業所が担う分野は半導体関連が中心となり、最新鋭の設備や装置など、積極的に投資を行っていきます。また、研究開発の開発速度向上、効率化を目的としたMI活用のための人材投資や企業としての社会的責任を果たすためにCO₂排出量削減に向けたサステナビリティ投資も押し進めていきます。
財務戦略による企業価値向上に向けて
今回の中期経営計画では、「成長投資」および「株主還元」を財務戦略の両輪としており、特に株主還元においては、安定的な増配および機動的な自己株式の取得に加え、新たに総還元性向50%目安という数値目標を設定し、株主還元方針を拡充しました。企業価値向上を目指す上では、必要情報を積極的に開示する必要があると判断し、今後も当社ホームページを通じた情報発信、さらには本中期経営計画期間の3か年における統合報告書の制作など、経営の透明性を今まで以上に高めて企業価値の向上に努めていきます。
財務戦略|資本政策

