環境配慮型製品 窒素フリー化学ニッケルめっきプロセス(開発中) ENILEX NI-500
総合研究所 基幹技術開発部 若田 康輔 Kosuke WAKATA 横山 千香子 Chikako YOKOYAMA
はじめに
装飾分野をはじめとした樹脂上へのめっきの下地処理には、樹脂素材上にNiを被覆させる化学Niめっきが広く用いられている。一般的に化学Niめっきプロセスには、pH調整や安定化のために高濃度のアンモニアが含まれている。しかし、排水中にアンモニアや窒素が含まれることで、環境に対する負荷が高いことが近年の課題となっている。実際に中国では窒素は20ppm以下、アンモニア態窒素は15ppm以下という排水規制が導入されており、河川付近の地域では、さらに規制は厳しくなる。また、アンモニアは臭気が強く、作業環境の観点からも使用しない方が望ましい。
上記のような背景から、当社ではアンモニアをはじめとした窒素化合物を含有しない化学NiめっきプロセスENILEX NI-500(以下、NI-500)を開発した。
前回の報告(JCU テクニカルレポートVol.109)では本プロセスの性能・特長を報告したが、今回はプロセス組成や管理方法について報告する。
特長
- 窒素化合物不使用
- 臭気が弱く扱いやすい
- Pb、Cdなどの規制物質不使用
- 製品がすべて液体のため、取扱いが容易
- なめらかで均一、かつ密着性が良い皮膜が得られる
- アンモニア含有プロセスと同等の安定性
プロセス組成と作業条件
NI-500の組成を表1に示す。

また、作業条件を表2に示す。樹脂めっきに使用されている従来の化学Niめっきプロセスと同様の条件で使用することができる。

管理方法
NI-500プロセスは、従来の当社アンモニア含有プロセスと同様に、分析管理が可能である。Ni金属分が不足した場合は各種補給用成分を補給する(表3)。またpHが低下した際には、pH調製用の成分であるNI-500 Pを使用する。

めっき性能
一般的なPd触媒付与を行ったABS素材に対して、NI-500プロセスを用いて化学Niめっきを行った写真を図1(左)に示す。外観は均一で良好であり、めっき未析出などの不良は発生していない。また、NI-500プロセス処理後にCuめっき、NiめっきおよびCrめっきの一連の電気めっきを行った写真を図1(右)に示す。外観不良やフクレなどの不良は確認されず、良好なめっき皮膜が得られた。

NI-500めっき後にCu, Ni, Crめっきを行った外観(右)
おわりに
当社が開発した窒素フリー化学NiめっきプロセスENILEX NI-500は、アンモニアなどの窒素化合物を含有しいないにもかかわらず、従来のアンモニア含有プロセスと同等の性能を有している。また、補給や作業条件なども従来プロセスと同様で、特別な変更を必要としない。現在、早期市場展開すべく拡販を進めている。