テクニカルレポート

環境配慮型製品 装飾用3価クロムめっきプロセス処理品の抗ウイルス効果

装飾・機能分野

CS技術統括部 基幹技術部 冨田 和仁 Kazuhito TOMITA
総合研究所 新規技術開発部 今長谷 昂平 Kohei IMAHASE

はじめに

世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症をはじめ、周期的に発生するウイルス性感染症の流行により、近年世間のウイルスに対する関心が高まっている。流行しやすいウイルスには物質の表面を経由して人へ感染するものもあり、公共設備では手すりなどの表面に抗ウイルス処理を施しているものが増えた。また一部の金属は表面での抗菌・抗ウイルス効果が期待され、市場ではこれらの金属を用いた製品の需要が増加している。当社の表面処理プロセスにも抗ウイルス効果の可能性があり、評価試験を行った。本報では公的機関による評価で抗ウイルス効果が確認されためっきプロセスについて紹介する。

抗ウイルス性評価方法

当社めっきプロセスを使用した処理品表面のウイルス不活化試験を、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所に依頼した。インフルエンザウイルス(H3N2)を含んだ液をめっき皮膜上に滴下し、その上からポリプロピレンフィルムを被せ密着させ、25℃で24時間静置した。その後ウイルスを含んだ液を回収し、プラーク法にて感染力を持つウイルス量の指標である感染価を測定した。

評価結果

ウイルス不活化試験の結果を図1に示す。装飾用黒色3価クロムめっきプロセスJCUTRICHROME JTC-BK(以下、JTC-BK)処理品では、ステンレス材と比べて99%以上、装飾用6価クロムめっき品と比べて80%以上のウイルス不活化がそれぞれ認められた。
また、装飾用白色3価クロムめっきプロセスJCUTRICHROME JTC-WH2(以下、JTC-WH2)処理品においても、約65%のウイルス不活化が認められた。なお、ステンレス材以外の3つのめっき品は、下地にNiめっきを施している。

図1 ウイルス不活化試験結果

装飾用黒色3価クロムめっきプロセス JTC-BK

本調査にてめっき処理品の表面に抗ウイルス効果が確認されたJTC-BKは、有害とされる6価クロムを含有しない、環境や人体に配慮したプロセスである。JTC-BKプロセスのめっき処理品外観を図2に示す。めっき皮膜は均一な光沢と黄色味の少ない(青みの強い)黒色外観を有し(L値:63,a値:-0.1,b値:1.1)、またつき廻り性と均膜性、および塩害性を含む耐食性にも優れているため、各種プラスチック、金属、装飾用品などの仕上げめっきに適したプロセスである。

図2 JTC-BKプロセスのめっき処理品外観

おわりに

装飾用3価クロムめっきプロセスJCUTRICHROME JTC-BKおよびJTC-WH2は、人体や環境に有害な6価クロムを含まないプロセスとして開発されたものである。本プロセスは環境配慮型製品という本来の特長に加え、抗ウイルス効果も確認された。
今後、自動車部品はもちろん、ステンレス材や装飾・機能性を必要とするさまざまな部材など、幅広い用途への展開が期待される。