高耐食性マイクロポーラスクロムめっき用ニッケルストライクプロセス(開発中) MP-NI 503L
総合研究所 基幹技術開発部 柴田 佳那 Kana SHIBATA
はじめに
高耐食性めっきプロセスMP-NIは、自動車外装部品をはじめとした高耐食性が要求される部品に使用される重要なめっき工程である。当社が市場に展開しているMP-NIシリーズは多くのお客様に採用されており、本稿で報告するMP-NI 503Lプロセス(以下503L)も現在開発が進んでいる。
503Lの一番の特長は、取扱いが容易な液体タイプの添加剤(微孔形成剤)を使用する点であり、生産ラインにおいては、従来プロセスよりも非常に管理がしやすいプロセスとなっている。また、棚上と棚下の微孔数のバランスも良好で、優れた高耐食性能を示す。
既報(109号)では、本製品の性能および特長を紹介した。本報では添加剤の組成および使用方法を中心に報告する。
特長
- 添加剤がすべて液体であり、めっき液管理が容易
- 棚上・棚下の微孔数バランスが良好
- 微孔数管理が容易
- 従来プロセスと同等以上の耐食性
建浴濃度および管理方法
503Lの建浴濃度と補給量を表1に示す。503Lは光沢剤2製品、微孔形成剤3製品で構成されている。
光沢剤はMP-501およびMP-502の使用を推奨するが、他のMP-NIシリーズの光沢剤でも使用が可能となっている。微孔形成剤はMP-503A、MP-503B、MP-503Cの3種類で構成されており、定期的な補給を行うことで安定した微孔数管理が可能である。

MP-503Aは微孔形成に寄与するパウダーを含んだ液体添加剤である。MP-503Bは分散剤であり、素早い微孔形成に貢献する。MP-503Cは微孔形成に寄与する電荷付与剤となっており、棚上と棚下の微孔バランスを良化させる働きを持っている。これらの微孔形成剤は、事前によく混合した溶液にして添加、補給を行う。
続いてワット浴組成を表2に、使用条件を表3に示す。液温は503Lの微孔数に大きく影響を与えるため、管理には注意が必要である。


耐食性
CASS試験80hにて503Lの耐食性を試験した結果を図1に示す。

表面写真より、503Lは従来プロセスに比べ同等以上の良好な耐食性を得られることがわかる。
おわりに
MP-NI 503Lは、当社MP-NIシリーズの中では、すべての添加剤が液体タイプとなっている初のプロセスである。従来のパウダータイプに比べ、生産ラインでのめっき液管理の負担を大幅に軽減することが可能であり、できる限り早く市場へ展開していきたい。