シリコンアイランド九州
大阪支店 九州営業所 所長 宇陀 力 Chikara UDA
九州は全県が海に面しており、とらふぐ、やりいか、ヒラスなど数多くの海産物が獲れることから、漁業が盛んな地域です。畜産業も多く、宮崎牛、阿蘇あか牛をはじめとするブランド牛や黒豚、鶏肉、馬肉など、畜産物も全国から高く評価されています。また、イチゴやスイカ、マンゴーなどの果物や焼酎も有名です。九州で美味しいものをあげれば枚挙にいとまがないほどです。吉野ヶ里遺跡をはじめとする遺跡や太宰府天満宮、門司港駅などの歴史的建造物、ハウステンボスなどのテーマパーク、阿蘇山や桜島などの雄大な山々といった観光名所があり、雨量が多く、温泉が湧き出る好条件が揃っているため、有名な温泉地も多くあります。これらを目的にたくさんの人々が訪れる、日本有数の観光地でもあります。工業では、鉄鋼業や化学工業、窯業などの素材産業で名を馳せた地域でもありますが、近年では大手自動車メーカーの工場立地が進み、関連企業も多く、自動車産業が主力となっています。そのような中、九州で一際注目を集めている産業があります。皆さまご承知のとおり、半導体産業です。
かつては、IT企業の進出により、数多くの半導体工場が建設され、装置メーカーや材料メーカーもあわせて進出しました。アメリカのシリコンバレーに倣って「シリコンアイランド」と呼ばれるまでになった九州ですが、当時の世界シェアの50%を占めていた日の丸半導体は、今や世界シェア6%まで落ち込んでおります。シリコンアイランドも当時の勢いを失ってしまいました。
しかし今、そのシリコンアイランドに輝きを取り戻すチャンスが到来しました。世界最大のファウンドリ企業が熊本県に進出します。政府支援のもと、熊本県菊池郡菊陽町に新工場を建設することとなり、現在、猛スピードで建設工事が進められています。この工場で働く従業員数は1700人にも上り、関連する企業を含めると7500人以上の雇用が見込まれています。また、住宅、ホテル、外食、学業、医療、コンビニ、スーパーなどの投資をも呼び込み、その経済効果は10年間で4兆円以上ともいわれております。熊本県の県内総生産が6兆円程度であることを考慮すると、そのインパクトは絶大です。
九州はシリコンアイランド復活に向けて動き出しました。電気自動車や自動運転など自動車の電装化、メタバース関連でスマートグラスなどの普及、他にも、IoT、スマートタウン・スマートシティなど、ありとあらゆるものに半導体が使われる時代となります。
そして、この度当社も半導体関連製品の研究開発、およびそれら製品の生産を含めた拠点を設立するため、熊本県益城町において土地購入を行いました。研究開発に関しては、最新鋭の設備を導入し、開発力の強化と開発スピードの迅速化を図ります。生産に関しては、現在の生産本部(新潟県上越市)と合わせた製品供給体制を整えることで、お客さまの要求に迅速に対応するための地盤固めができると考えています。
シリコンアイランドがかつての輝きを取り戻すため、当社もその一端を担うべく、半導体分野へ注力してまいります。熊本事業所が完成した暁には、ぜひ皆さまにお立ち寄りいただけると幸いです。また、そのころには、シリコンアイランド九州だけでなく、日本の半導体産業の復活を体感いただけることを期待しております。