テクニカルレポート

高電流密度対応フィリングめっきプロセス(開発中) CU-BRITE VF882

電子分野

総合研究所 新規技術開発部 谷本 由実 Yumi TANIMOTO
      電子技術開発部 安藤 俊介 Shunsuke ANDO 新谷 康成 Yasunari SHINTANI 長野 暢明 Nobuaki NAGANO

はじめに

市場では、スマートフォンを始めとした電子機器の普及、発展に伴いプリント基板の高密度化、高機能化が進んでおり、Cuめっきへの要求も多様化している。
当社では、以前から高電流密度に対応したフィリングめっきプロセスの開発を行っていたが、本報告ではブラインドビアホール(以下BVH)だけでなく低アスペクト比のスルーホールにも対応したプロセス、CU-BRITE VF882(以下、VF882)を開発したので紹介する。

高電流密度フィリングめっき

BVHで層間接続を行うビルドアップ多層基板は、構造の自由度の高さや配線の高密度化が可能である点から、多くの電子機器に用いられており、今後も需要が増加する傾向にある。従来、BVHフィリングめっきは、1~2A/d㎡という比較的低い電流密度でないと達成できなかったが、生産性向上のため電流密度を上げたいという要求が増えている。
そのような要求に対して、当社では電流密度3~5A/d㎡でBVHフィリングが可能なCU-BRTE 881Z(以下、881Z)プロセスを開発し、多くのお客様にご使用いただいてきた。一方で、881ZはBVHに対するフィリング性能は充分だが、近年増加傾向にある低アスペクト比スルーホールに対するフィリング性能はやや劣るという欠点があった。

低アスペクト比スルーホールフィリング

ビルドアップ多層基板のコア層ではBVHではなく、スルーホールをフィリングして層間接続を行う構造の需要があり、中でも低アスペクト比スルーホール(穴径が広く、樹脂厚の薄いもの)の割合が増加している。このようなスルーホールでのフィリング性能を達成するには、従来プロセスではめっき膜厚を厚くする必要があり、BVHフィリングとの両立が困難などの課題があった。
本報告で紹介するVF882は上記の問題を解決し、電流密度3A/d㎡で低アスペクト比スルーホールフィリングとBVHフィリングの両立が可能となっている。

VF882の性能

図1、2にBVH、スルーホールに対して、881ZおよびVF882の電流密度3A/d㎡でのめっき性能を示す。

図1 BVHに対するフィリング性の比較
図2 低アスペクト比スルーホールに対するフィリング性の比較

結晶配向

図3に881ZとVF882を使用し、電流密度3A/d㎡で成膜しためっきCu皮膜、および低電流密度フィリングプロセス1.5A/d㎡でのX線回折スペクトルを示す。

図3 X線回折スペクトル

VF882は高電流密度においても、従来プロセスのCuめっき皮膜と同様の結晶配向性であることが確認された。また、VF882のCuめっき皮膜のエッチング性は、881Zおよび低電流密度でのCuめっき皮膜と変わらない事を確認している。

おわりに

高電流密度対応フィリングめっきプロセスCU-BRITE VF882はこれまで困難であった、高電流密度でのBVHフィリングと低アスペクト比スルーホールフィリングの両立が可能である。まためっき皮膜は高電流密度においても、従来プロセス同様の結晶配向性を有している。
今後ますます高まる生産性向上のニーズに応えることが可能なプロセスであると確信する。