3価クロムめっき被膜用クロムフリー後処理プロセス(開発品)
総合研究所 基幹技術開発部 柴田 佳那 Kana SHIBATA
はじめに
従来より、家庭用や自動車用等の各種部品の表面処理方法として、クロムめっきやクロメート処理が使用されている。特に、優れた光沢外観や耐食性を有することから6価クロムを用いた処理が行われてきたが、近年では有害性や衛生性の観点から、3価クロムを用いるめっきや表面処理技術についても検討が進められている。
しかしながら、3価クロムによる被膜は6価クロムによる被膜に比べて耐食性が劣ることから、3価クロムめっき被膜に対して6価クロを用いた電解クロメート処理が行われることも多い。
本開発品は、6価クロムを使用せず、3価クロムめっき被膜の耐食性を向上させるクロムフリー後処理プロセスとなっている。本稿では、この開発品の特長および諸性能について紹介する。
特長
- 3価クロム、6価クロムを含有しない、環境、人体に優しいプロセス
- 浴管理、分析とも非常に容易
- 浸漬処理のみで均一で良好な耐食性
- 黒3価クロム、白3価クロムめっきの後処理に適したプロセス
標準建浴組成および管理範囲
表1に開発品の標準建浴組成および管理範囲を示す。A,B,C剤の3製品構成となっており、いずれも建浴、補給兼用であり、クロム化合物を含まない。
標準使用条件
表2に開発品の標準使用条件を示す。
性能
1.色調
当社白色3価クロムめっきプロセス「JCUTRICHROM JTC-WH2(以下、JTC-WH2)」、および黒色3価クロムめっきプロセス「JCUTRICHROM JTC-BK(以下、JTC-BK)」、「JCUTRICHROM JTC-BKM(以下、JTC-BKM)」から得られたクロムめっき被膜上に、本開発品による処理を施した際の色調測定結果を表3に示す。比較として、後処理なし(未処理)、従来技術である6価クロメート「EBACHRO-500(以下、E-500)」の測定結果も併記する。
色調は分光測色計(コニカミノルタ社製 CM-700d, SCI モード)を用いてLab*表色系に基づいて数値化した。いずれの3価クロムめっき被膜に対しても、開発品による処理後の色調は従来の6価クロメートと比較し色調変動が小さいことがわかる。
2.CASS耐食性
当社黒色3価クロムめっきプロセス「JTC-BK」から得られたクロムめっき被膜上に、本開発品による処理を施した際の耐食性試験結果を図1に示す。比較として、後処理なし(未処理)、従来技術である6価クロメート(E-500)の試験結果も併記する。
このように、開発品で処理した際の耐食性は従来技術同等以上の性能を有する。紙面の都合上、他条件(下地となる3価クロムめっき被膜の種類、膜厚)の結果の掲載は割愛するが、いずれも未処理よりも耐食性が向上することを確認している。
おわりに
今回紹介した3価クロムめっき被膜用クロムフリー後処理プロセスは、3価クロムめっき被膜の色調を損なうことなく耐食性を向上させることが可能となる。また、6価クロム化合物をはじめとするクロム化合物非含有の環境配慮型製品である。
昨今要求が高まりつつある環境負荷低減プロセスの一端を担うプロセスとして、今後は市場展開に尽力する所存である