テクニカルレポート

長寿命サテンニッケルめっきプロセス(開発品)

装飾・機能分野

総合研究所 基幹技術開発部 横山 千香子 Chikako YOKOYAMA
      解析技術部   都木 新介 Shinsuke TAKAGI
経営戦略室 経営企画部   衣幡 和男 Kazuo IBATA

はじめに

 サテンニッケルめっきプロセスは、めっき被膜の表面に微細な凹凸を発現させることで適度に艶が消えた高級感のある意匠が得られることから自動車の内装部品などに多く用いられている。
 このサテン調外観を得るために、近年多く用いられているのがめっき液中にエマルションを分散させて凹凸を得る手法(エマルション法)である。従来のエマルション法では、比較的短時間でエマルションが凝集して色調が変化するため、サテン剤の常時補給および定期的な浴浄化を要する場合がある。したがって、色調安定化のために特別な装置仕様や稼働時間の制約を受けていた。
 そこで現在、特殊な設備が不要でかつ、長期間の連続稼働が可能で従来よりも生産性の高いプロセスを開発している。本稿では本プロセスの開発状況について報告する。

特長

  • 長期間の連続稼働が可能
  • 作業性の向上
  • 特殊な設備不要

プロセス組成と標準使用条件

 表1に標準建浴組成と管理範囲を示す。開発プロセスは3液+2粉体(その他、基本薬品3粉体)で構成される。

表1 プロセス組成

 表2に標準使用条件と設備仕様を示す。従来プロセスとは異なり直接加熱・空気攪拌の使用が可能である。

表2 標準使用条件・設備仕様

連続稼働

 図1に連続稼働時のサテンニッケルめっき後の色調推移を示す。開発プロセスは、長期間の連続稼働が可能なことが最大の特長である。少なくとも2週間は空け換え活性炭を行わずに稼働できる。また、長期間休止した場合でも空け換えせずに容易に復帰が可能である。これにより大幅に作業性が向上することを確信している。

図1 連続稼働時の色調推移

サテン調の選択

  図2に添加剤Eの添加量とクロムめっき後のめっき被膜のL*値とグロス値の関係を示す。添加量の増加に伴い、L*値が増大し、グロス値は減少する。このため明るいサテン色調から、やや光沢味を押さえたサテン色調まで選択が可能となる。

図2 添加剤EとL*値・グロス値の関係

おわりに

 今回紹介した長寿命サテンニッケルプロセスは、従来よりも生産性と作業性に優れたプロセスである。長期間の連続稼働が可能なため、お客さまにとって負担が大きい空け換え活性炭処理の頻度を減らすことができる。今後とも量産設備での安定した生産要求に応えられるよう、更なる検討を重ねていく所存である。