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環境配慮型製品 窒素フリー化学ニッケルめっきプロセス(開発中)

総合研究所 基幹技術開発部 若田康輔 Kosuke WAKATA 横山千香子 Chikako YOKOYAMA

はじめに

自動車や水栓金具等の金属外観の装飾部品の多くは、ABS樹脂などのプラスチック素材にめっきを行う方法Plating on Plastics(POP)により金属光沢の外観が得られている。その下地処理として、プラスチック素材上に化学反応によってニッケルを被覆させる化学ニッケルめっきという手法が広く用いられている。一般的にPOPに用いられる化学ニッケルめっきプロセス(以下、従来プロセス)には、pH調整や薬液の安定化のために高濃度のアンモニアが含まれている。しかし、高濃度のアンモニアが薬液中に含まれていると、排水処理が困難であることが課題となっており、実際に中国では窒素排水においてparts per million(ppm)オーダーでの排水規制が導入され、薬液中にアンモニアを含まないプロセスの需要が高まっている。また、作業環境の観点から考えても、臭気が強いアンモニアは使用しない方が好ましい。上記のような背景から、アンモニアをはじめとした窒素化合物を含まない窒素フリー化学ニッケルめっきプロセス(以下、開発プロセス)の開発に着手した。

自動車や水栓金具等の金属外観の装飾部品の多くは、ABS樹脂などのプラスチック素材にめっきを行う方法Plating on Plastics(POP)により金属光沢の外観が得られている。その下地処理として、プラスチック素材上に化学反応によってニッケルを被覆させる化学ニッケルめっきという手法が広く用いられている。一般的にPOPに用いられる化学ニッケルめっきプロセス(以下、従来プロセス)には、pH調整や薬液の安定化のために高濃度のアンモニアが含まれている。しかし、高濃度のアンモニアが薬液中に含まれていると、排水処理が困難であることが課題となっており、実際に中国では窒素排水においてparts per million(ppm)オーダーでの排水規制が導入され、薬液中にアンモニアを含まないプロセスの需要が高まっている。また、作業環境の観点から考えても、臭気が強いアンモニアは使用しない方が好ましい。上記のような背景から、アンモニアをはじめとした窒素化合物を含まない窒素フリー化学ニッケルめっきプロセス(以下、開発プロセス)の開発に着手した。

特長

①窒素化合物不使用

開発プロセスは、従来プロセスに多量に含まれるアンモニアを使用しないことが大きな特長である。さらに、その他のアミン系化合物や硝酸系化合物、ピリジン系化合物といった窒素を含む物質は全て使用していない。そのため、めっき液の色は従来に見られる青色ではなく、緑色を呈している(図1)。さらに、アンモニアを用いる従来プロセスはアンモニアの臭気が非常に強く、作業性が芳しくない。それに対して、この窒素フリー化学ニッケルめっきプロセスはほぼ無臭であり、作業環境の改善に大きく貢献できる。

 

図1 従来プロセス(左)および開発プロセス(右)の薬液外観

 

②鉛不使用

従来プロセスには、性能向上のためにしばしば鉛化合物が用いられることがある。しかし鉛は以前から有害性が問題視されており、RoHS指令をはじめとする様々な規制の対象となっている。開発プロセスは窒素だけでなく鉛も使用しておらず、鉛に対する規制にも対応することが可能である。

①窒素化合物不使用

開発プロセスは、従来プロセスに多量に含まれるアンモニアを使用しないことが大きな特長である。さらに、その他のアミン系化合物や硝酸系化合物、ピリジン系化合物といった窒素を含む物質は全て使用していない。そのため、めっき液の色は従来に見られる青色ではなく、緑色を呈している(図1)。さらに、アンモニアを用いる従来プロセスはアンモニアの臭気が非常に強く、作業性が芳しくない。それに対して、この窒素フリー化学ニッケルめっきプロセスはほぼ無臭であり、作業環境の改善に大きく貢献できる。

 

図1 従来プロセス(左)および開発プロセス(右)の薬液外観

 

②鉛不使用

従来プロセスには、性能向上のためにしばしば鉛化合物が用いられることがある。しかし鉛は以前から有害性が問題視されており、RoHS指令をはじめとする様々な規制の対象となっている。開発プロセスは窒素だけでなく鉛も使用しておらず、鉛に対する規制にも対応することが可能である。

性能

開発プロセスは従来プロセスとほぼ同等の基本性能を有している。以下に、開発プロセスと従来プロセスの各種比較結果を報告する。

 

<析出性>

POPで一般的なパラジウム系触媒化処理を施したABS素材に対して、従来プロセスと同様に未析出部分なく全面にニッケル皮膜を被覆させることが可能である。図2に、従来プロセスにて処理した素材と、開発プロセスにて処理した素材の外観を示す。化学ニッケル皮膜の付きまわりに大きな差異はなく、良好な析出性を有していることがわかる。

 

図2 従来プロセスにて処理した素材(左)と、開発プロセスにて処理した素材(右)の外観

 

<浴安定性>

開発プロセスは、めっき液の浴安定性も良好であることを確認している。一般的に化学ニッケルめっきはニッケルイオンと還元剤がめっき液中に同時に存在するため、化学的に不安定な状態である。そのため、連続的な使用や不純物が混入することによって、めっき液の自己分解やめっき槽内へのニッケルの析出といったトラブルを引き起こす可能性がある。開発プロセスは、自己分解やめっき槽内へのニッケルの析出といったトラブルに対して従来プロセスと同等の耐性を有しており、十分な安定性を有している。

開発プロセスは従来プロセスとほぼ同等の基本性能を有している。以下に、開発プロセスと従来プロセスの各種比較結果を報告する。

 

<析出性>

POPで一般的なパラジウム系触媒化処理を施したABS素材に対して、従来プロセスと同様に未析出部分なく全面にニッケル皮膜を被覆させることが可能である。図2に、従来プロセスにて処理した素材と、開発プロセスにて処理した素材の外観を示す。化学ニッケル皮膜の付きまわりに大きな差異はなく、良好な析出性を有していることがわかる。

 

図2 従来プロセスにて処理した素材(左)と、開発プロセスにて処理した素材(右)の外観

 

<浴安定性>

開発プロセスは、めっき液の浴安定性も良好であることを確認している。一般的に化学ニッケルめっきはニッケルイオンと還元剤がめっき液中に同時に存在するため、化学的に不安定な状態である。そのため、連続的な使用や不純物が混入することによって、めっき液の自己分解やめっき槽内へのニッケルの析出といったトラブルを引き起こす可能性がある。開発プロセスは、自己分解やめっき槽内へのニッケルの析出といったトラブルに対して従来プロセスと同等の耐性を有しており、十分な安定性を有している。

おわりに

当社が開発している窒素フリー化学ニッケルめっきプロセスは、窒素化合物や鉛を含んでおらず様々な規制に対応でき、またアンモニア臭がしないことで作業性が大幅に改善されるという特長を持っている。このような特長を持ちながら、従来のアンモニア系化学ニッケルめっきプロセスと同等の性能を有しており、今後のPOP市場における業界標準製品とすべく鋭意開発を進めていく。

当社が開発している窒素フリー化学ニッケルめっきプロセスは、窒素化合物や鉛を含んでおらず様々な規制に対応でき、またアンモニア臭がしないことで作業性が大幅に改善されるという特長を持っている。このような特長を持ちながら、従来のアンモニア系化学ニッケルめっきプロセスと同等の性能を有しており、今後のPOP市場における業界標準製品とすべく鋭意開発を進めていく。

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JCUテクニカルレポート 109号 2021年1月