テクニカルレポート

プラズマ装置 枚様式プラズマ装置 PST-PHシリーズ

表面処理関連装置

営業本部 装置事業統括部
装置営業部 浅野 敬祐 Keisuke ASANO/ 山田 賢一 Kenichi YAMADA / 川崎 智弘 Tomohiro YAMASAKI

はじめに

第5世代移動通信システムである5Gの本格的な導入を目前に、スマートフォンなどの小型デバイスの技術革新が加速している。5G対応製品に使用されるプリント配線板も急速に高密度化しており、スルーホール(TH)、ブラインドビアホール(BVH)の小径化や、配線の微細化が進み、めっき前処理にプラズマによるドライ洗浄技術を採用する事例が増えている。
これに伴い、プラズマ装置に対しても、面内処理均一性やエッチング性能の向上など、お客様の要求性能が高まっている。本稿では、当社が独自開発した電極を備え、お客様からも好評を得ている自動搬送枚葉式プラズマ装置(図1)を紹介する。

図1 自動搬送枚葉式プラズマ装置

プラズマ表面処理

プラズマによる表面処理工程として、レーザーやドリルによるTH・BVH加工時に発生する樹脂残渣(スミア)を取り除くデスミア(図2)、ドライフィルム露光現像後の裾引きを除去するデスカム(図3)、めっきの密着性を改善する濡れ性付与、金めっき前のクリーニングなどが代表的な事例である。

図2 プラズマ処理前後のBVH内写真
図3 プラズマ処理前後のDFR裾部写真

自動搬送枚葉式プラズマ装置の特長

自動搬送枚葉式装置の特長を以下に示す。また、お客様からのニーズが高い1)と2)について詳しく紹介する。
1) 処理による処理均一性の向上
2) 自動搬送機構によるヒューマンエラーの削減
3) メンテナンス性の改善

処理均一性の向上

プラズマ処理は、樹脂残渣などの有機物を気化させて、エッチングやクリーニングを行う工程である。プロセスガス流れの下流では、CO2など副生成物の割合が増え、処理性能の低下につながる。
 
基板を複数枚処理できるバッチ式装置では、プロセスガスは基板に対して水平方向に一様に流れる。残銅率が低い基板をエッチングする場合、副生成物が多量に発生するため、ガス流れの下流に行くほど、処理性能が低下する。この傾向を改善するには、処理能力を低下させ、単位時間あたりの副生成物発生量を抑制する方法がある。しかし、処理時間が長くなるので、生産性が低下するデメリットは避けられない。
 
一方、枚葉式は基板全面に垂直方向にプロセスガスを流すことが可能なので、ガス上流・下流の処理性能差を最小限に抑制することができる。一枚あたりのガス流量を大幅に増やすことも容易であるため、副生成物の迅速な排気も可能となり、処理均一性も一層向上する。
 
残銅率の低い基板については、樹脂部の全面エッチング、レジスト表面の不純物層の除去などが求められる傾向にあり、処理均一性の向上が課題である。

自動搬送機構

自動搬送機構は、ヒューマンエラーの発生を大きく抑制できるため、海外での採用が増えている。当社は、半導体工場向けで多様な装置を納入した実績があり、お客様の希望仕様に合わせたオーダーメイドの対応が可能である。
例として①コンベア搬送②多関節ロボット搬送③チャンバー接続(ゲートバルブ仕様)などがある。また、工場側との上位通信にも対応可能で、ファイル連携、PLC連携などの実績がある。

おわりに

当社のプラズマ装置は、基板業界でポリイミド基材のデスミア工程で採用される事例が多い。しかし最近は、基板の製造工程が半導体レベルに近づいたことにより、上記以外の分野でも幅広く使用されるようになっている。
今後も当社の主力である薬品によるウェットプロセスと、プラズマ処理などのドライプロセスを融合させて、環境にも配慮したプロセス提案を行っていく。