テクニカルレポート

クロム酸フリーエッチングプロセス POPSTAR MSE

装飾・機能分野

JCU INTERNATIONAL, INC. 倉持 保之 Yasuyuki KURAMOCHI
営業本部 CS技術統括部 基幹技術部 根道 靖丈 Yasutake NEMICHI 池田 佳隆 Yoshitaka IKEDA

はじめに

近年、環境問題に対する関心の高まりから、環境負荷の軽減対策は当社としても必要不可欠な取り組みである。
表面処理業界においては、鉛や6価クロムなどの有害物質を使用しない環境調和型技術が要求されている。しかしながら、自動車の内外装部品や水栓金具などに使用されるABS等の樹脂にめっきを施す際には、通常クロム酸によるエッチングが行われる。
当社ではクロム酸エッチングの代替技術として過マンガン酸を用いたエッチング処理POPSTARプロセスを開発している(83号、86号参照)。
この度、過マンガン酸の自然分解消耗に対する安定性をさらに向上させたPOPSTAR MSEプロセスを開発したので本報にて紹介する。

特長

1) 有害である6価クロムおよびその他環境規制物質を含まない。
2) 樹脂表面に親水基と微小な凹凸を形成し、化学的な効果と物理的な効果の相互作用でクロム酸エッチングと同等のめっき析出性、密着性を実現。
3) 浴安定性が非常に高く、過マンガン酸起因の分解物が発生しないため、管理が容易かつ電解再生装置など大型設備も不要。
4) パラジウム触媒の低濃度化が可能。
5) PC/ABSにも同様のめっき処理が可能。
6) 治具被覆部へのめっき析出を抑制することができるため、ワンラック方式でのめっきが可能。

工程

表面粗化形状

図1に各エッチング後のABS表面SEM画像を示す。POPSTAR MSEプロセスでは、クロム酸エッチングほど粗大な凹凸を形成しないことがわかる。

図1 各エッチング後のABS表面SEM画像(5000倍)

エッチング浴の安定性

図2にPOPSTAR MSEと旧検討浴の各エッチング液を使用温度(68℃)下にて放置した時の過マンガン酸濃度の変化を示す。POPSTAR MSEは旧検討浴の課題であった過マンガン酸の自然分解消耗を大幅に改善した。

図2 使用温度(68℃)下にて放置した時の過マンガン酸濃度の経時変化

めっき製品の性能評価

表1に密着性評価結果を示す。評価素材は当社オリジナルABSテストピースを用いて行った。

表1 密着性評価結果

(密着強度)
 JIS H8630に従い、樹脂/皮膜間のピール強度を測定
(ヒートショック試験条件)
 -30℃、60分→70℃、60分・・・40サイクル
 -40℃、60分→80℃、60分・・・10サイクル

おわりに

POPSTAR MSEプロセスは6価クロムを使用しない環境調和型めっきプロセスである。今後は、市場定着を目指していきたい。