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表面処理とは?~種類や機能、使用用途などを紹介~

表面処理について

ご存知でしょうか?

私たちの便利で快適な生活や、それを支える技術の進歩を陰で支え続けてくれているもの。もしなかったら私たちの生活が成り立たなくなってしまうかもしれないもの。

それが表面処理技術です。

このページでは、そもそも「表面処理」という技術が一体どういうものなのか、どんな種類があり、私たちの生活をどのように支えてくれているのかを、分かりやすく解説していきます。


◉表面処理とは


表面処理とは、金属や樹脂、ゴム、セラミックなどの素材の表面の質を変化させる技術です。

「素材の表面の質を変化させる」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、素材の表面を変化させることができれば、方法は問いません。

たとえば、自動車のボディに塗装をすることも、表面処理の一種なのです。

「ただ色を付けただけで表面処理と言えるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、車体の表面に塗料の膜を付けることで、サビなどから素材の表面を守るはたらきをもつようになります。 このように、方法は問わず、素材の表面を違う性質を持つものに変化させるのが表面処理と呼ばれる技術です。


◉表面処理を行うメリット


表面処理を行うことで、製品を美しく見せたり、素材が本来持たない以下のような機能を付与することができるのがメリットです。

装飾機能光沢・色調
機器的機能硬さ、耐摩耗性、潤滑性
電気的機能導電性、高周波特性、磁気記録特性、ハンダ付け性、絶縁性
光学的機能光吸収性、光反射性、発光性
物理的機能接着性、グリップ性、濡れ性
化学的機能耐薬品性、抗菌性、触媒性
熱的機能耐熱性、熱伝導性、熱吸収性、熱反射性


たとえば、自動車が雨風にさらされながらもサビたりせずに長期間美観を保っているのは、めっき加工や塗装などの表面処理のおかげです。

また銀や銅、コバルトなど抗菌性を持つめっき加工は、医療機器やドアハンドルなどあらゆる場所で使用されており、私たちの生活の衛生管理に役立っています。

さらには、スマートフォンがこれほど便利なのも、その中にある多くの精密な電子部品にめっき加工が施されることで、電子機器の高機能化を実現しているからです。

このように、知らないだけで、私たちは日々の生活で表面処理技術の様々なメリットを受け続けているのです。


◉表面処理の種類


表面処理には様々な種類が存在します。

数ある表面処理技術の中でも私たちの身近な製品によく使われる、代表的なものは次の5つです。

表面処理の種類方法用途事例
めっき金属や非金属の表面を金属で被膜を形成する・自動車部品
・PC、スマートフォン部品
・宝飾品、食器
・水栓金具
など
塗装素材の表面に液体、粉末、あるいはスプレー状の塗料を付け、塗膜を形成する・ガードレール、門扉
・自動車補修
・木工家具
・造船、鉄工
など
アルマイト(陽極酸化)アルミニウムの表面の耐久性を上げるため、その表面に酸化被膜を電解処理によって形成する・照明機器
・自動車のアルミホイール
・医療機器
など
溶射素材の表面に金属やセラミックを溶解させた物質を噴射し、被膜を形成する・化学プラント
・水車の羽
・ロケットエンジンノズル
など
化成処理化成処理液に金属を浸し、化学反応を起こすことで金属表面に被膜を形成する・自動車車体、家電
・ドラム缶
・機械部品


それぞれどのような表面処理方法なのかを見ていきましょう。

◉-1、めっき


めっきを表す画像


めっきは、金属や非金属の表面を金属で被膜を形成する表面処理技術です。

約3,500年も前から行われている歴史ある技術であり、素材を綺麗に見せる装飾性や、持ちをよくする耐久性、本来素材が持たない性質を持たせる機能性を目的として使われます。

自動車部品や、食器、蛇口などの水栓金具などに使われているイメージが強いめっきですが、PCやスマートフォン部品などの機能を支える半導体などにも使われており、最先端技術を支える重要な技術としても注目されています。


◉-2、塗装


塗装を表す画像


塗装は、素材の表面に液体、粉末、あるいはスプレー状の塗料を付け、塗膜を形成する表面処理技術です。

木製のテーブルや椅子、建築物、自動車、船舶、航空機、ガードレールや門扉など、あらゆ
るものを美しく見せたり、外的要因から守る目的で施される表面処理技術です。

また、テフロン加工やフッ素樹脂コーティングされたフライパンのように、特殊な機能を持つ塗装を行うことによって、新たな機能を付加するなどの技術も近年注目されています。


◉-3、アルマイト(陽極酸化)


アルマイト(陽極酸化)を表す画像


アルマイト(陽極酸化)は、アルミニウムの表面の耐久性を上げるため、その表面に酸化被膜を電解処理によって形成するという表面処理技術です。

1923年に日本人によって発明された日本発祥の表面処理技術であり、主に照明機器や自動車のアルミホイール、医療機器など、アルミニウムに様々な性質を付与したい場合に使われます。

日本が誇る世界的な表面処理技術と言っても過言ではありません。

めっきとよく混同されますが、素材を異なる金属の被膜で覆うのがめっきであり、素材そのものが酸化した皮膜を形成するのがアルマイト(陽極酸化)です。


◉-4、溶射


溶射を表す画像


溶射は、素材の表面に金属やセラミックを溶解させた物質を噴射し、被膜を形成するという表面処理技術です。

1909年にスイスで誕生した技術で現地での施工が可能であることから化学プラントなど大きな施工物などに活用されています。

また、変形や歪みなどを起こしにくいことからロケットエンジンのノズルなど精密な部品の表面処理にもよく使われます。


◉-5、化成処理


化成処理を表す画像


化成処理は化成処理液に金属を浸し、化学反応を起こすことで金属表面に被膜を形成する表面処理技術です。自動車や家電など、幅広く産業分野で用いられています。

素材の表面の着色や美観の形成、腐食などを防ぐ目的でも使われますが、塗料の密着性を向上させるために塗装の下地処理としても活用されます。


◉表面処理は私たちの生活を下支えしてくれている技術


表面処理は様々な部品、製品、建造物などに使われており、私たちの生活を支えてくれる縁の下の力持ちのような存在です。

また、表面処理技術は、めっきなどのように私たちの生活をより便利で快適にしてくれる技術でもあるのです。

JCUでは数ある表面処理技術の中で、めっきの性能向上や品質の安定などに用いられる薬品の開発・販売を行っています。

次回では「めっきとは具体的にどのような技術なのか」をより詳しく紹介していきます。