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JCUテクニカルレポート バックナンバー一覧

ポリイミド用無電解Niめっきシード層形成プロセス ELFSEED

総合研究所
エレクトロニクス技術開発1部 PWB3課
高徳 誠  Makoto KOHTOKU / 福本 ユリナ  Yurina FUKUMOTO / 中丸 弥一郎  Yaichiro NAKAMARU

はじめに

ポリイミド(PI)フイルムは優れた耐熱性、屈曲性、電気絶縁性から、フレキシブルプリント配線板(FPC)の絶縁材料として用いられている。FPCの作製にはフレキシブル銅張積層板(FCCL)が用いられ、PI表面のメタライズ方法の一つとして乾式法であるスパッタリング法が用いられている。市販されているメタライズタイプの2層FCCLは、PI表面にNi/Cr合金とCuのシード層をスパッタリングで形成し、その上に電解Cuめっきにより導体層が形成されている。このFCCLは、PIと導体層の接合界面が極めて平滑で導体層の薄膜化が容易なため、ファイン回路形成に有利である。しかしながら、スパッタリングによるシード層形成は非常に高価でFCCLの価格も高く、その使用が制限される。
スマートフォンに代表される携帯情報端末などの小型化、高性能化に伴い、FPCの軽薄短小化、ファインパターン回路形成、低コスト化が強く望まれている。現在のFPCは安価なラミネートタイプやキャストタイプのFCCLが使用されており、PIと導体層の界面が平滑でなく、銅箔の薄膜化が難しいためファインパターンの回路形成が困難で、また、銅箔が厚いためFPCの薄型化が難しい。さらに、ランドが大きいためランド間の配線形成領域が少なく、FPCの小型化が困難である。市場から要求されるFPCの軽薄短小化に応えるためには、メタライズタイプの2層FCCLを用いる必要があるが、高価なために採用は難しく、より安価な材料、プロセスの出現が望まれている。
我々は2008年に安価な湿式法の無電解Niめっきを用いたシード層形成プロセス「ELFSEED(エルフシード)」を製品化し、2010年には本プロセスを用いて現行のメタライズタイプの2層FCCLと同等性能、かつ低コストの2層FCCLの作製に成功している(図1)1)。このELFSEEDプロセスを用い、スルーホール(TH)を形成したPIの表、裏、TH内部を一括でメタライズできればFPCの軽薄短小化と大幅なコスト削減に対応することができる(図2、図3)2)
本報告ではELFSEEDプロセスを用いた先孔工法による、FCCLを介さない直接FPC作製について述べる。

密着強度

PIフィルムには東レ・デュポン社製カプトンENを用い、表1に従ってNiシード層をPIの両面に形成した。その後、電解Cuめっき皮膜を18μm形成し、180°ピール強度を測定した。その結果を図4に示す。


各膜厚のPIフィルムで、常態で0.8~1.2kN/m、150℃、168時間の熱負荷後で0.6~1.0kN/mの十分な密着強度を得ることができた。

PIフィルムには東レ・デュポン社製カプトンENを用い、表1に従ってNiシード層をPIの両面に形成した。その後、電解Cuめっき皮膜を18μm形成し、180°ピール強度を測定した。その結果を図4に示す。


各膜厚のPIフィルムで、常態で0.8~1.2kN/m、150℃、168時間の熱負荷後で0.6~1.0kN/mの十分な密着強度を得ることができた。

回路形成

東レ・デュポン社製カプトン100EN(t=25μm)を用い、表1に従ってNiシード層を形成し、当社のフレキシブル基板用電解Cuめっき浴CU-BRITERFを用いて8μmの導体層を形成した。レジスト回路パターン形成後、一般に使用される塩化鉄水溶液を用いてサブトラクティブ法にて回路形成を行った。その結果を図5-aに示す。L/S=15μm/15μmの回路形成が可能であることを確認した。また、導体層を1.5μm形成したサンプルに対してはセミアディティブ法を用いて回路形成を行った。その結果を図5-bに示す。スペース部のCuとNiのエッチングには当社のセミアディティブ回路形成用過酸化水素/硫酸系Cuエッチング液ファインエッチSACを用いた。Niシード層のエッチング性は良好で、CuとNiをCuエッチング液で同時に除去することができた。なお、セミアディティブ法ではL/S=4μm/6μmの回路パターンが形成可能であった。本手法を用いて形成したNiシード層は、微細回路形成が可能であることがわかった。

東レ・デュポン社製カプトン100EN(t=25μm)を用い、表1に従ってNiシード層を形成し、当社のフレキシブル基板用電解Cuめっき浴CU-BRITERFを用いて8μmの導体層を形成した。レジスト回路パターン形成後、一般に使用される塩化鉄水溶液を用いてサブトラクティブ法にて回路形成を行った。その結果を図5-aに示す。L/S=15μm/15μmの回路形成が可能であることを確認した。また、導体層を1.5μm形成したサンプルに対してはセミアディティブ法を用いて回路形成を行った。その結果を図5-bに示す。スペース部のCuとNiのエッチングには当社のセミアディティブ回路形成用過酸化水素/硫酸系Cuエッチング液ファインエッチSACを用いた。Niシード層のエッチング性は良好で、CuとNiをCuエッチング液で同時に除去することができた。なお、セミアディティブ法ではL/S=4μm/6μmの回路パターンが形成可能であった。本手法を用いて形成したNiシード層は、微細回路形成が可能であることがわかった。

先孔工法

東レ・デュポン社製カプトン100EN(t=25μm)にUV-YAGレーザーを用いて25μmφのTHを形成した。その後、表1に従ってNiシード層を形成し、当社のTHフィリング用電解Cuめっき浴CU-BRITETF3を用いてTHのCu充填を行った。TH部の断面観察結果を図6に示す。アスペクト比1のTHに対して、表層膜厚8μmでフィリングが可能であった。フィリングされたTHは導電性や放熱性に優れ、またランドの小径化に伴う配線密度の向上も期待できる。

東レ・デュポン社製カプトン100EN(t=25μm)にUV-YAGレーザーを用いて25μmφのTHを形成した。その後、表1に従ってNiシード層を形成し、当社のTHフィリング用電解Cuめっき浴CU-BRITETF3を用いてTHのCu充填を行った。TH部の断面観察結果を図6に示す。アスペクト比1のTHに対して、表層膜厚8μmでフィリングが可能であった。フィリングされたTHは導電性や放熱性に優れ、またランドの小径化に伴う配線密度の向上も期待できる。

おわりに

ELFSEEDプロセスを用いて両面FPCを作製し、その性能を確認した。密着強度は導体層厚み18μmにおいて常態で0.8~1.2kN/m、150℃、168時間の熱負荷後に0.6~1.0kN/mと十分な値を得ることができた。また、サブトラクティブ法(L/S=15μm/15μm)、セミアディティブ法(L/S=4μm/6μm)により微細配線を形成することが可能で、Niシード層の除去性も良好であった。さらに、先孔工法によるTH形成PIへのTHフィリングも可能であった。今後さらに進むであろうFPCの軽薄短小化とコスト削減に大きく貢献できると考えられる。
ELFSEEDプロセスを用いた先孔工法による両面FPCの量産が昨年から行われており、現在順調に稼働中である。最近ではPIフィルムだけではなく、PI成型物や半導体などに用いられるコーティングタイプのPIなどへの応用もあり、その用途は拡大している。今後いっそうPI上へのダイレクトめっき技術が浸透して いくよう努力していきたい。

 

参考文献
1)高徳誠、中丸弥一郎、濵田実香、松本守治、林伸治;JCUテクニカルレポート、88号(2008)
2)中丸弥一郎、福本ユリナ、高徳誠、君塚亮一;第27回JIEP講演大会 講演論文集、543-546(2013)

その他記事

JCUテクニカルレポート 97号 2015年1月