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AISL (第2報)
AISL(第2報)
『AISL』は、UV照射による表面改質とホルマリンフリーの無電解銅-ニッケルめっき処理により、平滑樹脂面への高密着シード層形成を可能にした環境調和型めっきプロセスである。第1報(Vol.87)では本プロセスの簡単な紹介、及び各樹脂材料でのピール強度について報告した。本報ではガラス強化ナイロン樹脂における各種評価結果について報告する。
処理工程
『AISL』の標準処理工程を図1に示す。
図1 『AISL』の標準処理工程
『AISL』の標準処理工程を図1に示す。
図1 『AISL』の標準処理工程
評価樹脂
ガラス強化ナイロン樹脂:
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 レニー材 ポリアミドをガラス繊維で強化することによりエンジニアリングプラスチックの中でも強度・剛性が高い樹脂として、金属代替材料など様々な分野で使用されている。
ガラス強化ナイロン樹脂:
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 レニー材 ポリアミドをガラス繊維で強化することによりエンジニアリングプラスチックの中でも強度・剛性が高い樹脂として、金属代替材料など様々な分野で使用されている。
各密着処理法による表面形状とピール強度
塩酸エッチング処理では空孔が出現し樹脂表面はエッチングされていたが、めっきは析出しなかった。クロム酸や過マンガン酸によるエッチングでは、めっきは析出するものの良好な密着は得られなかった。それに対してUV照射では表面形状は変化していないにもかかわらずめっきの析出性は良好で、0.6 kN/mの高密着が得られている。
塩酸エッチング処理では空孔が出現し樹脂表面はエッチングされていたが、めっきは析出しなかった。クロム酸や過マンガン酸によるエッチングでは、めっきは析出するものの良好な密着は得られなかった。それに対してUV照射では表面形状は変化していないにもかかわらずめっきの析出性は良好で、0.6 kN/mの高密着が得られている。
UV照射前後の表面粗さと接触角
UV照射前後では樹脂の表面形状の変化はないが、SPMによる粗さ測定によりナノオーダーで粗度の増大が確認された。また、UV照射により表面の濡れ性は増大し、接触角は1/5に低下している。これはUV照射によって樹脂表面が改質され親水基が形成された結果である(表2)。
UV照射前後では樹脂の表面形状の変化はないが、SPMによる粗さ測定によりナノオーダーで粗度の増大が確認された。また、UV照射により表面の濡れ性は増大し、接触角は1/5に低下している。これはUV照射によって樹脂表面が改質され親水基が形成された結果である(表2)。
UV照射時間の影響
UV照射時間が短いとPd吸着量は少なく、めっきの析出性も低下する。UV照射による親水性の増加がPd吸着量と付き廻りに影響を及ぼしている為と考えられる。
図2 UV照射時間の影響
UV照射時間が短いとPd吸着量は少なく、めっきの析出性も低下する。UV照射による親水性の増加がPd吸着量と付き廻りに影響を及ぼしている為と考えられる。
図2 UV照射時間の影響
無電解めっき浴の比較
AISLと一般浴の物性を表3に示す。平滑表面に無電解銅めっきをする場合、ホルマリン浴ではめっき反応で生成する水素ガスによりめっき皮膜にブリスターを生じやすい。一方、AISLの無電解銅‐ニッケルめっきはブリスターの発生がなく、ホルマリン浴と比較して良好な密着が確認できている。
AISLと一般浴の物性を表3に示す。平滑表面に無電解銅めっきをする場合、ホルマリン浴ではめっき反応で生成する水素ガスによりめっき皮膜にブリスターを生じやすい。一方、AISLの無電解銅‐ニッケルめっきはブリスターの発生がなく、ホルマリン浴と比較して良好な密着が確認できている。
おわりに
今回ご紹介した『AISL』は、樹脂材料に合わせて最適なめっき工程を設計することにより、これまでめっき密着性を得ることが困難であったエンプラ平滑表面への高密着シード層形成が可能であり、エレクトロニクス分野、装飾めっきなど様々な分野での応用が期待される。
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JCUテクニカルレポート 90号 2011年8月