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スルーホールフィリング用硫酸銅めっきプロセス

総合研究所 第1開発室
石塚 博士 Hiroshi ISHIZUKA / 小合 康裕 Yasuhiro OGO / 石川 久美子 Kumiko ISHIKAWA

 

戦略マーケティング部
萩原 秀樹 Hideki HAGIWARA

スルーホール銅めっき充填技術の開発

電子機器の小型化に伴い、より高密度化するプリント配線板や電子回路を形成するためにフィルドめっきの需要が増加している。フィルドビアの上にビアを形成する、いわゆるスタックビア形成法を用いて層間接続することにより配線デザインの自由度が格段に大きくなるとともに、導電性や接続信頼性を向上させることが可能になる。このような理由から、国内外を問わずビアフィリングめっきが広く使用されるようになってきた。さらに、近年では海外でのプリント配線板の生産量増大に伴い、コスト競争に拍車がかかっている。2006年の調査データでは、世界プリント配線板生産高において、日本が24%なのに対して中国が27%、台湾15%、韓国11%と海外でも、特に東南アジアでのプリント配線板生産量が急増している。日本国内においても、海外に製造拠点を持つメーカーが多い。一方、日系企業の国内外での生産量比率を見てみると、2001年には(国内:海外=88.4%:11.6%)だったのに対して、2008年では(国内:海外=69.5%:30.5%)まで変化し、2012年には海外生産量が36%程度まで引き上げられると予想されている1), 2)。この中で、国内で生産する基板に関しては技術的に特化した付加価値の高いもの(モジュール基板や高多層プリント配線板など)の割合が増加している傾向がある。これらの基板にはICチップが実装されるため熱伝導性(放熱性)や導電性、更なる配線の微細化が求められている。このような背景のもと、当社では硫酸銅スルーホールフィリングめっきプロセス「CU-BRITE TF II」の開発を進めてきた。本技術はプリント配線板コア層のスルーホールを銅めっき充填するプロセスであり、従来採用されてきたペースト充填法に比べて、大幅に製造工程を短縮できるため、半導体パッケージ基板コア層の製造コストを約6割削減することが可能となる。さらに、ペースト充填法に比べて、銅めっき充填法では放熱性や接続信頼性の向上も期待できる。本報では上述したようなスルーホールフィリングのメリットやCU-BRITE TF IIの実験データおよび今後の展開について報告する。

電子機器の小型化に伴い、より高密度化するプリント配線板や電子回路を形成するためにフィルドめっきの需要が増加している。フィルドビアの上にビアを形成する、いわゆるスタックビア形成法を用いて層間接続することにより配線デザインの自由度が格段に大きくなるとともに、導電性や接続信頼性を向上させることが可能になる。このような理由から、国内外を問わずビアフィリングめっきが広く使用されるようになってきた。さらに、近年では海外でのプリント配線板の生産量増大に伴い、コスト競争に拍車がかかっている。2006年の調査データでは、世界プリント配線板生産高において、日本が24%なのに対して中国が27%、台湾15%、韓国11%と海外でも、特に東南アジアでのプリント配線板生産量が急増している。日本国内においても、海外に製造拠点を持つメーカーが多い。一方、日系企業の国内外での生産量比率を見てみると、2001年には(国内:海外=88.4%:11.6%)だったのに対して、2008年では(国内:海外=69.5%:30.5%)まで変化し、2012年には海外生産量が36%程度まで引き上げられると予想されている1), 2)。この中で、国内で生産する基板に関しては技術的に特化した付加価値の高いもの(モジュール基板や高多層プリント配線板など)の割合が増加している傾向がある。これらの基板にはICチップが実装されるため熱伝導性(放熱性)や導電性、更なる配線の微細化が求められている。このような背景のもと、当社では硫酸銅スルーホールフィリングめっきプロセス「CU-BRITE TF II」の開発を進めてきた。本技術はプリント配線板コア層のスルーホールを銅めっき充填するプロセスであり、従来採用されてきたペースト充填法に比べて、大幅に製造工程を短縮できるため、半導体パッケージ基板コア層の製造コストを約6割削減することが可能となる。さらに、ペースト充填法に比べて、銅めっき充填法では放熱性や接続信頼性の向上も期待できる。本報では上述したようなスルーホールフィリングのメリットやCU-BRITE TF IIの実験データおよび今後の展開について報告する。

スルーホールフィリングの有用性

従来のプリント配線板コア層の製造工程を図1に示した。従来法ではスルーホール内に充填するペーストの粘度によって、スルーホールの小径化に制限を受けることになる。
さらに、余分なペーストやインク剤を研磨して平滑化する場合、基板の反りや変形が問題になる。加えて、コンフォーマルめっきとフタめっきの2段めっきになるために、表層膜厚が厚くなりエッチング回路形成時の配線の微細化に制限を受けることになる。

図1 従来のプリント配線板製造工程

このような課題は、スルーホールフィリングを用いることによって、全て克服することができる。さらに図1に示した(1)コンフォーマルめっきから(4)フタめっきまでの4工程をフィリングめっき1工程に短縮することが可能になり、大幅な生産性の向上や製造コストの削減が期待できる。
また、図2に示したようにICチップが搭載されるような高密度基板では、ICで使用される膨大なデータを伝えるための導電性、およびIC側で発生した熱をマザーボード側へ効率的に逃がすための放熱性が必要とされる。表1には、一般的に使用されている導電性ペーストと純銅における熱伝導率および体積抵抗率の単純比較を示した。これらのデータから、従来使用されてきた導電性ペーストに比べ、スルーホール内を銅で充填することにより、放熱性として80~200倍、比抵抗として1/3~1/6とそれぞれ大幅な性能向上が期待できる。



図2 ペースト充填法とスルーホールフィリングの比較

従来のプリント配線板コア層の製造工程を図1に示した。従来法ではスルーホール内に充填するペーストの粘度によって、スルーホールの小径化に制限を受けることになる。
さらに、余分なペーストやインク剤を研磨して平滑化する場合、基板の反りや変形が問題になる。加えて、コンフォーマルめっきとフタめっきの2段めっきになるために、表層膜厚が厚くなりエッチング回路形成時の配線の微細化に制限を受けることになる。

図1 従来のプリント配線板製造工程

このような課題は、スルーホールフィリングを用いることによって、全て克服することができる。さらに図1に示した(1)コンフォーマルめっきから(4)フタめっきまでの4工程をフィリングめっき1工程に短縮することが可能になり、大幅な生産性の向上や製造コストの削減が期待できる。
また、図2に示したようにICチップが搭載されるような高密度基板では、ICで使用される膨大なデータを伝えるための導電性、およびIC側で発生した熱をマザーボード側へ効率的に逃がすための放熱性が必要とされる。表1には、一般的に使用されている導電性ペーストと純銅における熱伝導率および体積抵抗率の単純比較を示した。これらのデータから、従来使用されてきた導電性ペーストに比べ、スルーホール内を銅で充填することにより、放熱性として80~200倍、比抵抗として1/3~1/6とそれぞれ大幅な性能向上が期待できる。



図2 ペースト充填法とスルーホールフィリングの比較

CU-BRITE TF IIの特長(実験データ)

当社で開発したCU-BRITE TF IIは、DC電源を用いている。これは、現在使用中の硫酸銅めっきラインへの適用を考慮したものであり、大幅な設備改造を含む高額な設備投資を避けることを開発の基本コンセプトとしてきたためである。また、本プロセスの添加剤は抑制剤と光沢剤の2成分を使用している。一般的な硫酸銅プロセスの添加剤は3~4成分を使用するものが多いが、2成分にすることにより、量産現場での液管理が容易になり、かつ分析時間の短縮も可能になる。さらに、量産ラインでの生産性を考えると従来のビアフィリングプロセスと同等のめっき時間、めっき膜厚でフィリングめっきを完成させる必要がある。実際にTF IIで試験を行ったデータを下図に示した。
図3に示したように、フィリングさせるために必要なめっき膜厚は穴径の影響を大きく受ける。板厚100μm、穴径100μmと80μmのスルーホールを比較すると、前者は膜厚25μm程度でフィリングしているのに対して、後者は20μmで表面をフラットにすることが可能である。これより、穴径をより小さくすることによって、より膜厚を薄くすることが可能であると考えられる。

図3 表面膜厚とフィリング性の関係

また、図4に示したように、電流密度に関しては穴径80μmでは2.0A/dm2(ASD)以上、穴径100μmでは2.5ASD以上でボイドの発生が確認された。このように、ボイドの発生を防ぐためにはスルーホールのアスペクト比に応じた電流設定が必要になる。

図4 電流密度とボイド発生の関係

また、TF IIの更なる特長として優れたエッチング特性及びビアフィリング性能が挙げられる。
スルーホールフィリングめっき後に、よりファインな回路を形成するため、ハーフエッチング等によって表層膜厚を薄くする場合を想定し、TF IIにおけるエッチングプロファイルを観察した。その結果、図5のように表面のフラット性を維持したエッチングが可能であった。

図5 TF IIめっき後のエッチングプロファイル

また、TF IIは良好なビアフィリング性能を有しており、図6のように一つのプロセスで全層フルスタック構造を形成できることも特長の一つである。さらに、TF IIで使用している添加剤(抑制剤)は、攪拌の強い部分に優先的に吸着する性質がある。この抑制剤の吸着量を攪拌で制御することにより、スルーホール開口部のめっき析出を抑え、ボイドの発生を抑制することができる。(図7)
ただし、スルーホールの場合ブラインドビアホールに比べて、穴内の液流通性が高いため、攪拌が過剰になると穴内にまで抑制剤が吸着し、コンフォーマル析出になる傾向がある。

図6 TF II浴を用いたビアフィリング

図7 抑制剤の吸着(攪拌強さ)と析出形態

図8に示したように、適正な攪拌量はスルーホールのアスペクト比によって変化し、アスペクト比の高いものほど強い攪拌が必要とされる。このように、TF IIではスルーホールのアスペクト比に応じた攪拌量の設定が重要になる。

また、攪拌方式に関しても従来のAir攪拌よりも制御し易く、より強い攪拌が実現できる基板垂直方向からの噴流攪拌(横噴流攪拌)を推奨としている。

図8 攪拌量とフィリング性の関係

当社で開発したCU-BRITE TF IIは、DC電源を用いている。これは、現在使用中の硫酸銅めっきラインへの適用を考慮したものであり、大幅な設備改造を含む高額な設備投資を避けることを開発の基本コンセプトとしてきたためである。また、本プロセスの添加剤は抑制剤と光沢剤の2成分を使用している。一般的な硫酸銅プロセスの添加剤は3~4成分を使用するものが多いが、2成分にすることにより、量産現場での液管理が容易になり、かつ分析時間の短縮も可能になる。さらに、量産ラインでの生産性を考えると従来のビアフィリングプロセスと同等のめっき時間、めっき膜厚でフィリングめっきを完成させる必要がある。実際にTF IIで試験を行ったデータを下図に示した。
図3に示したように、フィリングさせるために必要なめっき膜厚は穴径の影響を大きく受ける。板厚100μm、穴径100μmと80μmのスルーホールを比較すると、前者は膜厚25μm程度でフィリングしているのに対して、後者は20μmで表面をフラットにすることが可能である。これより、穴径をより小さくすることによって、より膜厚を薄くすることが可能であると考えられる。

図3 表面膜厚とフィリング性の関係

また、図4に示したように、電流密度に関しては穴径80μmでは2.0A/dm2(ASD)以上、穴径100μmでは2.5ASD以上でボイドの発生が確認された。このように、ボイドの発生を防ぐためにはスルーホールのアスペクト比に応じた電流設定が必要になる。

図4 電流密度とボイド発生の関係

また、TF IIの更なる特長として優れたエッチング特性及びビアフィリング性能が挙げられる。
スルーホールフィリングめっき後に、よりファインな回路を形成するため、ハーフエッチング等によって表層膜厚を薄くする場合を想定し、TF IIにおけるエッチングプロファイルを観察した。その結果、図5のように表面のフラット性を維持したエッチングが可能であった。

図5 TF IIめっき後のエッチングプロファイル

また、TF IIは良好なビアフィリング性能を有しており、図6のように一つのプロセスで全層フルスタック構造を形成できることも特長の一つである。さらに、TF IIで使用している添加剤(抑制剤)は、攪拌の強い部分に優先的に吸着する性質がある。この抑制剤の吸着量を攪拌で制御することにより、スルーホール開口部のめっき析出を抑え、ボイドの発生を抑制することができる。(図7)
ただし、スルーホールの場合ブラインドビアホールに比べて、穴内の液流通性が高いため、攪拌が過剰になると穴内にまで抑制剤が吸着し、コンフォーマル析出になる傾向がある。

図6 TF II浴を用いたビアフィリング

図7 抑制剤の吸着(攪拌強さ)と析出形態

図8に示したように、適正な攪拌量はスルーホールのアスペクト比によって変化し、アスペクト比の高いものほど強い攪拌が必要とされる。このように、TF IIではスルーホールのアスペクト比に応じた攪拌量の設定が重要になる。

また、攪拌方式に関しても従来のAir攪拌よりも制御し易く、より強い攪拌が実現できる基板垂直方向からの噴流攪拌(横噴流攪拌)を推奨としている。

図8 攪拌量とフィリング性の関係

スルーホールフィリングめっきの今後の展望

本報では、主に携帯電話やデジタルカメラなどのコア層に用いられている穴径100μm、板厚100μmのスルーホールについて実験データを紹介した。しかし、今日の市場全体を見ると、スルーホールフィリングめっき技術は様々なスルーホールサイズ、基板材料、用途で需要がある。
我々は、まずスルーホールフィリングプロセスの早期市場定着を目標とし、これと同時に本プロセスの用途を拡げて行きたいと考えている。

本報では、主に携帯電話やデジタルカメラなどのコア層に用いられている穴径100μm、板厚100μmのスルーホールについて実験データを紹介した。しかし、今日の市場全体を見ると、スルーホールフィリングめっき技術は様々なスルーホールサイズ、基板材料、用途で需要がある。
我々は、まずスルーホールフィリングプロセスの早期市場定着を目標とし、これと同時に本プロセスの用途を拡げて行きたいと考えている。

参考文献
1) (社)日本電子回路工業会「2008年の日本の電子回路産業」
2) (社)日本電子回路工業会「電子回路産業調査レポート 2008年度版 電子回路製造業編」
その他記事

JCUテクニカルレポート 85号 2009年1月