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高屈曲性無電解ニッケルめっき液 SKYLITE PB-608

営業本部 

薬品事業統括部 大阪支店  植村 智之  Tomoyuki UEMURA

CS技術統括部 電子技術部 高橋 秀臣  Hideomi TAKAHASHI

はじめに

フレキシブルプリント基板(FPC)は軽量で薄い、かつ優れた柔軟性を持つプリント基板である。このような特性を持つFPCは近年、薄膜太陽電池やスマートフォン、車載用電子部品などに幅広く使用されている。さらに、折り曲げたり巻きつけたりして人体につけるウェアラブル端末は、情報機器としての利用だけでなく、健康管理などの生体応用への適用も期待される。

プリント基板では最終表面処理として無電解ニッケル/金めっきが用いられている。しかし、高硬度のニッケル皮膜は曲げなどの応力で割れやすく、ニッケル皮膜の破断が起点となって下地の銅配線が断線してしまうことがある。したがって、ニッケル/金めっきの表面処理をFPCに適用するためには、曲げなどの形状変化に対応できる高屈曲性のニッケルめっきが要求される。そこで本報では、このようなニーズに応えるために開発した高屈曲性の無電解ニッケルめっき液SKYLITE PB-608を紹介する。

浴管理条件

表1、2にSKYLITE PB-608の構成液種と使用条件を示す。本製品は2種類の建浴剤と3種類の補給剤から構成される。このめっき浴から中りんタイプのニッケル-りん合金皮膜が得られる無電解ニッケルめっきである。

 

 

表1 SKYLITE PB-608の構成液

 

 

表2 SKYLITE PB-608の使用条件と浴管理範囲

 

表1、2にSKYLITE PB-608の構成液種と使用条件を示す。本製品は2種類の建浴剤と3種類の補給剤から構成される。このめっき浴から中りんタイプのニッケル-りん合金皮膜が得られる無電解ニッケルめっきである。

 

 

表1 SKYLITE PB-608の構成液

 

 

表2 SKYLITE PB-608の使用条件と浴管理範囲

 

屈曲特性

図1にMIT試験により評価しためっき皮膜の屈曲性を示す。ポリイミド基材上の銅配線にニッケルめっきをした試料にて評価した。ニッケルめっき前の銅配線では、MIT折り曲げ回数はおおよそ200~350回を記録した。これに対して、一般プリント基板向けの従来品で作製した試料では破断までの回数が著しく低下した。一方でSKYLITE PB-608のめっき後では銅配線と同等の屈曲性を維持しており、ニッケルめっき層が屈曲性低下の要因にならない良好な結果が得られた。

 

 

 

図1  MIT試験によるニッケル皮膜の屈曲性能

図1にMIT試験により評価しためっき皮膜の屈曲性を示す。ポリイミド基材上の銅配線にニッケルめっきをした試料にて評価した。ニッケルめっき前の銅配線では、MIT折り曲げ回数はおおよそ200~350回を記録した。これに対して、一般プリント基板向けの従来品で作製した試料では破断までの回数が著しく低下した。一方でSKYLITE PB-608のめっき後では銅配線と同等の屈曲性を維持しており、ニッケルめっき層が屈曲性低下の要因にならない良好な結果が得られた。

 

 

 

図1  MIT試験によるニッケル皮膜の屈曲性能

皮膜形状と屈曲性向上のメカニズム

表面形態を観察するため、ニッケル/金めっき後に金めっき皮膜を剥離したニッケル表面をSEMで観察した(図2)。SKYLITE PB-608のニッケル表面には大きな孔食はなく、従来品と同等に孔食が少ない表面である。さらに、 SKYLITE PB-608はより粒子が細かく、粒界も顕著に現れている。

表面形態の違いについて確認するため、皮膜断面をSEMで観察した(図3)。従来品はニッケル皮膜が層状になって析出しているのに対して、SKYLITE PB-608は柱状に皮膜が成長していることが確認できる。

図4に層状と柱状のめっき皮膜を折り曲げた際にかかる応力の模式図を示す。層状の皮膜では曲げ部分に応力が集中するため形状変化に対する耐性が低くなるが、柱状の皮膜では表面部分にかかる応力が分散されることから、高い屈曲特性を保持できると考えられる。

 

 

 

図2 金めっき皮膜剥離後ニッケル表面のSEM像(膜厚5µm)

 

 

 

 

図3  ニッケル皮膜断面SEM像(膜厚5µm)

 

 

 

 

図4 応力分散メカニズム模式図

表面形態を観察するため、ニッケル/金めっき後に金めっき皮膜を剥離したニッケル表面をSEMで観察した(図2)。SKYLITE PB-608のニッケル表面には大きな孔食はなく、従来品と同等に孔食が少ない表面である。さらに、 SKYLITE PB-608はより粒子が細かく、粒界も顕著に現れている。

表面形態の違いについて確認するため、皮膜断面をSEMで観察した(図3)。従来品はニッケル皮膜が層状になって析出しているのに対して、SKYLITE PB-608は柱状に皮膜が成長していることが確認できる。

図4に層状と柱状のめっき皮膜を折り曲げた際にかかる応力の模式図を示す。層状の皮膜では曲げ部分に応力が集中するため形状変化に対する耐性が低くなるが、柱状の皮膜では表面部分にかかる応力が分散されることから、高い屈曲特性を保持できると考えられる。

 

 

 

図2 金めっき皮膜剥離後ニッケル表面のSEM像(膜厚5µm)

 

 

 

 

図3  ニッケル皮膜断面SEM像(膜厚5µm)

 

 

 

 

図4 応力分散メカニズム模式図

はんだ接合強度評価

ニッケル/金めっきはめっきの最終表面処理に使用され、 その後の工程に電子部品の実装がある。そのためプリント基板向けニッケルめっきには、はんだ接合性が要求される。そこで当社の置換金めっき液SKYGOLD I-80を用いて、ニッケル/金めっきを処理した後、実装したはんだボールのボールシェア試験を実施した。図5のはんだ接合強度は、はんだ/ニッケルめっき間の接合力が従来品と同等性能であることを示している。

また、破壊面のバッド上のはんだ残量の割合から4種類のモードに分類した(図6)。図5の界面破壊モードの結果は、SKYLITE PB-608は従来品と同様に50~100%のはんだ残りモードが多い結果となった。このモードは、はんだ部分でせん断されていることから、はんだ/ニッケル皮膜の接合が十分であることを示している。

安定した破壊強度、破壊モードが得られていることからも、良好なはんだ接合性が得られると考える。

 

 

 

図5 ボールシェア試験 (破壊強度、破壊モード)

 

 

 

 

図6 はんだ破壊面モード(はんだ残量を4形態で分類)

ニッケル/金めっきはめっきの最終表面処理に使用され、 その後の工程に電子部品の実装がある。そのためプリント基板向けニッケルめっきには、はんだ接合性が要求される。そこで当社の置換金めっき液SKYGOLD I-80を用いて、ニッケル/金めっきを処理した後、実装したはんだボールのボールシェア試験を実施した。図5のはんだ接合強度は、はんだ/ニッケルめっき間の接合力が従来品と同等性能であることを示している。

また、破壊面のバッド上のはんだ残量の割合から4種類のモードに分類した(図6)。図5の界面破壊モードの結果は、SKYLITE PB-608は従来品と同様に50~100%のはんだ残りモードが多い結果となった。このモードは、はんだ部分でせん断されていることから、はんだ/ニッケル皮膜の接合が十分であることを示している。

安定した破壊強度、破壊モードが得られていることからも、良好なはんだ接合性が得られると考える。

 

 

 

図5 ボールシェア試験 (破壊強度、破壊モード)

 

 

 

 

図6 はんだ破壊面モード(はんだ残量を4形態で分類)

おわりに

SKYLITE PB-608は基材の折り曲げなど、形状変化に対応できる高屈曲性ニッケルめっき皮膜が得られる無電解ニッケルめっき液である。

当社の最終表面処理薬品SKYLITEプロセスは、無電解ニッケル/金めっき(ENIG)、無電解ニッケル/パラジウム/金めっき(ENEPIG)など、要求性能に応じた製品が提供可能である。今後も微細配線に対応できるよう、製品開発を進めて行きたい。

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JCUテクニカルレポート 104号 2018年8月