株式会社JCU

JCUテクニカルレポート バックナンバー一覧

電波透過特性膜形成プロセス ELTRAコート

総合研究所 開発統括部

新規技術開発部

上山 浩幸  Hiroyuki UEYAMA / 高橋 直貴  Naoki TAKAHASHI

はじめに

現在の自動車は、前方障害物を高精度で検知するため前面中央部に配置されるメーカーエンブレムの後方にミリ波の送受信ユニットが設置されている。そのため、メーカーの象徴でもあるエンブレムには、装飾性と電波透過特性が求められる。装飾性としてはクロム金属光沢が要求され、電波透過特性は薄膜で非導通膜が必要となる(図1)。

 

 

図1 エンブレム断面イメージ

 

 

現在この要求を満たすため、PC基材上にインジウムを蒸着法による海島状の成膜技術を利用し製造されているが、後工程である樹脂モールド時の熱によりインジウム膜が溶解し導通膜となることなどから、非常に歩留まりが悪く、コストが高くなることが大きな課題となっている。

本稿では、現行工法(図2)に対しインジウム蒸着膜などの技術課題を解決する有機膜とスパッタリング技術を組み合わせた新しいプロセス工法について紹介する。

 

 

図2 エンブレムの現行工法概略図

ELTRAコートプロセスの特長

ELTRAコートプロセスは、現行技術の課題解決のため、図2に示すようにPC基材上に有機膜層を形成し、スパッタリングでクロム膜を成膜した後に熱処理を行い熱膨張率の差異によりクラックを形成する工法(図3)である。

このプロセスでは熱によるインジウム溶解の課題が解決し、工程数も少なくなることから歩留まりが向上し、大幅なコスト削減が期待できる。

 

 

図3 ELTRAコートプロセス工程概略図

 

 

ELTRAコートプロセスで作製した評価基材の電波透過特性(減衰量)を図4に示す。前方障害物の検知で使用されている76GHz、79GHzでの電波減衰量は、現行のインジウム蒸着品に比べ遜色がない結果となっている。

クラック(図5)は、熱膨張率差により形成しているため、形状の制御は困難であるが、同一条件下であればクラック数、電波透過特性は再現でき、色調(金属光沢)、密着性についても要求を満足する結果となっている。

 

 

図4 電波透過特性(減衰量)

 

 

 

図5 クロムクラック外観写真

ELTRAコートプロセスは、現行技術の課題解決のため、図2に示すようにPC基材上に有機膜層を形成し、スパッタリングでクロム膜を成膜した後に熱処理を行い熱膨張率の差異によりクラックを形成する工法(図3)である。

このプロセスでは熱によるインジウム溶解の課題が解決し、工程数も少なくなることから歩留まりが向上し、大幅なコスト削減が期待できる。

 

 

図3 ELTRAコートプロセス工程概略図

 

 

ELTRAコートプロセスで作製した評価基材の電波透過特性(減衰量)を図4に示す。前方障害物の検知で使用されている76GHz、79GHzでの電波減衰量は、現行のインジウム蒸着品に比べ遜色がない結果となっている。

クラック(図5)は、熱膨張率差により形成しているため、形状の制御は困難であるが、同一条件下であればクラック数、電波透過特性は再現でき、色調(金属光沢)、密着性についても要求を満足する結果となっている。

 

 

図4 電波透過特性(減衰量)

 

 

 

図5 クロムクラック外観写真

ELTRAコートプロセスの応用

ここまではエンブレムの金属光沢を有するミリ波透過性能と工法について説明してきたが、その他にも静電容量センサー用途でドアハンドルなど施錠装飾部品としても適用ができる。また、スパッタリング成膜のため、従来のカラーリング技術により図6のように色彩を変化させることが可能となり、よりデザインの幅を大きく広げられる。更に光が透過することから照明用途への可能性も期待できる。

 

 

図6 スパッタリングによる色彩変化例

ここまではエンブレムの金属光沢を有するミリ波透過性能と工法について説明してきたが、その他にも静電容量センサー用途でドアハンドルなど施錠装飾部品としても適用ができる。また、スパッタリング成膜のため、従来のカラーリング技術により図6のように色彩を変化させることが可能となり、よりデザインの幅を大きく広げられる。更に光が透過することから照明用途への可能性も期待できる。

 

 

図6 スパッタリングによる色彩変化例

おわりに

ELTRAコートプロセスは、透明有機膜とニッケルめっきの技術※1と低真空プラズマプロセス技術※2の応用から確立したウェットとドライ技術の融合により生まれた技術である。今後も表面処理による新しい技術を生み出し社会に貢献できるプロセスを創出していく所存である。

 

※1 関東学院大学材料表面工学研究所と株式会社きもとの開発

※2 株式会社島津製作所と共同開発

その他記事

JCUテクニカルレポート 102号 2017年8月