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難めっき材料へのメタライズに対応したコーティングプロセス〈開発中〉 SIPaC (仮称)

総合研究所 開発統括部

新規技術開発部  佐土原 大祐  Daisuke SADOHARA / 伊部 公太  Kouta IBE

 

総合研究所    清野 正三  Shozo SEINO

はじめに

難めっき素材といわれているガラスやポリプロピレン、ポリエチレン等の素材に対して、めっき法により金属を成膜する場合、アンカー効果による密着性を得るためにフッ素化合物、高濃度アルカリ、クロム酸、トルエン、キシレン等を用いて、基材表面のエッチングを行う。その後、Pdコロイドやイオン性Pd等金属触媒を付与する事で、析出性を得る方法が報告されている。さらに近年では低粗化アプローチとしてUV等を用いて基材表面にカルボキシル基等の官能基を導入した後、無電解めっきに対するPd等の金属触媒を付与し化学結合を利用しためっき手法も評価が行われている。

電子基板の分野では、基材に対するめっき析出性、密着性の他に、めっきの選択性による回路形成が求められており、これらの要求に対してサブトラクティブ法やセミアディティブ法(以下、SAP)等の手法が用いられている。

本稿では、これまでの手法と異なり、基材表面を粗化して改質を行うのではなく、無電解めっきに対する触媒性を有するSIPaCコーティングにより得られたガラスを含む基板材料上へ金属形成メカニズムおよび、SAPによる回路形成、スルーホール基板へのフィリングめっきアプローチ例について紹介する。

SIPaCプロセスとは

Silicone - Palladium Oligomer Coating Processの略称となる。表1に製品構成を、表2にシード層形成までの加工工程を示す。本プロセスはコーティングのみで密着層の形成、触媒付与、還元処理が可能となり、さらに300℃以下での処理が提案できる。

 

 

表1 SIPaCプロセス製品構成 

 ※ 開発品のため、暫定とする。

 

 

表2 シード層形成までの加工工程 

Silicone - Palladium Oligomer Coating Processの略称となる。表1に製品構成を、表2にシード層形成までの加工工程を示す。本プロセスはコーティングのみで密着層の形成、触媒付与、還元処理が可能となり、さらに300℃以下での処理が提案できる。

 

 

表1 SIPaCプロセス製品構成 

 ※ 開発品のため、暫定とする。

 

 

表2 シード層形成までの加工工程 

自社開発Siオリゴマーの特徴

図1にオリゴマーの推定構造を示す。(A)は一般的なシロキサン構造体、(B)は当社開発オリゴマーの推定構造である。当社開発オリゴマーの特徴としてSiオリゴマー中のアルキル基及びSi結合間に各金属が配位可能となっている。

図2に成膜時のPd化学状態を示す。本オリゴマーは成膜工程の焼成の際に配位していたPdが還元されている事が確認できる。それに伴い無電解めっきに対して触媒性を有するコーティング膜を得る事が可能となる。

 

 

図1 Siオリゴマーの推定構造

 

 

 

図2 XPSを用いたコーティング膜中の化学状態

図1にオリゴマーの推定構造を示す。(A)は一般的なシロキサン構造体、(B)は当社開発オリゴマーの推定構造である。当社開発オリゴマーの特徴としてSiオリゴマー中のアルキル基及びSi結合間に各金属が配位可能となっている。

図2に成膜時のPd化学状態を示す。本オリゴマーは成膜工程の焼成の際に配位していたPdが還元されている事が確認できる。それに伴い無電解めっきに対して触媒性を有するコーティング膜を得る事が可能となる。

 

 

図1 Siオリゴマーの推定構造

 

 

 

図2 XPSを用いたコーティング膜中の化学状態

密着メカニズム

図3に無電解めっき後の断面SEM像を示す。AM剤起因の有機膜層とBM剤起因のSi層が混層状態となっており、層間を縫うように無電解めっきが成長しているためナノアンカーによる密着が得られている。

また、エポキシ等の有機材料へは有機膜起因の結合、ガラス等の無機材料へはSiオリゴマー起因の結合により密着が得られるため、有機無機問わず各種基材へのアプローチが可能となる。

 

 

図3 無電解ニッケルめっき後コーティング断面(High-Angle BSE Image)

 

図3に無電解めっき後の断面SEM像を示す。AM剤起因の有機膜層とBM剤起因のSi層が混層状態となっており、層間を縫うように無電解めっきが成長しているためナノアンカーによる密着が得られている。

また、エポキシ等の有機材料へは有機膜起因の結合、ガラス等の無機材料へはSiオリゴマー起因の結合により密着が得られるため、有機無機問わず各種基材へのアプローチが可能となる。

 

 

図3 無電解ニッケルめっき後コーティング断面(High-Angle BSE Image)

 

SAPによる回路形成例

図4にガラス上へSIPaCプロセスを用いシード層を形成した後に、SAPにて回路形成を行ったサンプルの表面SEM像を示す。本プロセスの無電解めっき時に既にアンカーによる高い密着性を有しているため、シード層上へフォトマスクを用いたレジストパターン形成が可能となっている。

 

 

図4 回路形成後の表面SEM像

 

図4にガラス上へSIPaCプロセスを用いシード層を形成した後に、SAPにて回路形成を行ったサンプルの表面SEM像を示す。本プロセスの無電解めっき時に既にアンカーによる高い密着性を有しているため、シード層上へフォトマスクを用いたレジストパターン形成が可能となっている。

 

 

図4 回路形成後の表面SEM像

 

スルーホール基板へのアプローチ例

FR4基板を用い両面レーザー加工により開孔径、内孔径、板厚をそれぞれφ=80、φ=60、t=200 µmとする砂時計状の貫通孔を使用した。

図5よりスルーホール内部へのシード層形成が可能であることを示す。また当社にて現在開発中のCuめっきプロセスを用いることで、良好なフィリング性も合わせて確認した。

 

 

図5 無電解めっき後のEDSマッピング像およびフィリングめっき後の断面像

FR4基板を用い両面レーザー加工により開孔径、内孔径、板厚をそれぞれφ=80、φ=60、t=200 µmとする砂時計状の貫通孔を使用した。

図5よりスルーホール内部へのシード層形成が可能であることを示す。また当社にて現在開発中のCuめっきプロセスを用いることで、良好なフィリング性も合わせて確認した。

 

 

図5 無電解めっき後のEDSマッピング像およびフィリングめっき後の断面像

おわりに

SIPaCプロセスは 第130回表面技術講演大会にて優秀講演賞を受賞し、学術的にご評価頂いたSiオリゴマーを基に開発したプロセスである。

前回の報告より少し時間が経過しているが、満足頂ける製品とすべく誠意開発を進めている。

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JCUテクニカルレポート 103号 2018年1月