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低パラジウム濃度対応キャタライザー ENILEX CT-806
はじめに
近年、特に中国のPOP(Plating on Plastics)市場では、キャタライザー浴中のPd濃度の低濃度化が浸透してきている。従来の当社キャタライザーであると、Pd濃度の低濃度化に伴い化学Niめっきでの無めっき不良が生じる等、必ずしもこのニーズを満足する性能が得られない場合もあった。この度、大きな市場ニーズとなっている低Pd濃度使用に対応できる新たなキャタライザーENILEX CT-806(以下、CT-806)を開発したので、ここに紹介する。
特長
〈低Pd濃度管理〉
標準管理濃度Pd 15mg/L
〈触媒吸着促進剤 (ENILEX CT-EH) の併用〉
当社独自の触媒吸着促進剤を使用。安定しためっき析出性の確保、低Pd濃度化に大きく寄与。
〈優れた不純物耐性〉
不純物蓄積時においても、従来プロセス新規建浴液同等以上の性能を維持。
〈低Pd濃度管理〉
標準管理濃度Pd 15mg/L
〈触媒吸着促進剤 (ENILEX CT-EH) の併用〉
当社独自の触媒吸着促進剤を使用。安定しためっき析出性の確保、低Pd濃度化に大きく寄与。
〈優れた不純物耐性〉
不純物蓄積時においても、従来プロセス新規建浴液同等以上の性能を維持。
標準建浴組成および管理範囲
作業条件
ENILEX CT-EHの効果
図1に、キャタライザー浴中へのENILEX CT-EH添加の有無による処理基材(ABS樹脂およびPC/ABS樹脂)に対する化学Niめっき析出量を示す。ENILEX CT-EHの添加により、化学Niめっき析出性向上の効果が認められる。
図1 CT-EH添加による化学Niめっき析出量の変化
図1に、キャタライザー浴中へのENILEX CT-EH添加の有無による処理基材(ABS樹脂およびPC/ABS樹脂)に対する化学Niめっき析出量を示す。ENILEX CT-EHの添加により、化学Niめっき析出性向上の効果が認められる。
図1 CT-EH添加による化学Niめっき析出量の変化
従来プロセスとの比較
<化学Niめっき析出性>
図2に、従来プロセスおよびCT-806プロセス処理時(いずれも浴中Pd濃度15mg/L)のABS樹脂に対する化学Niめっきの析出状態を示す。CT-806プロセスは従来プロセスと比較し、圧倒的に反応性が優れる。
図2 化学Niめっき析出状態(30秒処理時)
<PC/ABS樹脂に対する化学Niめっき析出性>
図3に、従来プロセス(Pd 25mg/L)およびCT-806プロセス(Pd 15mg/L)処理時の各種PC/ABS樹脂に対する化学Niめっき析出量を示す。CT-806プロセスは、いずれの樹脂に対しても従来プロセスより優れた化学Niめっき析出性が得られる。
図3 PC/ABS樹脂に対する化学Ni析出量
<Cr不純物混入時における化学Niめっき析出量>
図4に、キャタライザー浴中にCr不純物が混入した際の化学Niめっき析出量の変化を示す。CT-806プロセス(Pd 15mg/L)はCr 300mg/L混入時においても、従来プロセス(Pd 25mg/L)新規建浴液以上の性能を有する。
図4 Cr不純物混入時における化学Ni析出量変化
<化学Niめっき析出性>
図2に、従来プロセスおよびCT-806プロセス処理時(いずれも浴中Pd濃度15mg/L)のABS樹脂に対する化学Niめっきの析出状態を示す。CT-806プロセスは従来プロセスと比較し、圧倒的に反応性が優れる。
図2 化学Niめっき析出状態(30秒処理時)
<PC/ABS樹脂に対する化学Niめっき析出性>
図3に、従来プロセス(Pd 25mg/L)およびCT-806プロセス(Pd 15mg/L)処理時の各種PC/ABS樹脂に対する化学Niめっき析出量を示す。CT-806プロセスは、いずれの樹脂に対しても従来プロセスより優れた化学Niめっき析出性が得られる。
図3 PC/ABS樹脂に対する化学Ni析出量
<Cr不純物混入時における化学Niめっき析出量>
図4に、キャタライザー浴中にCr不純物が混入した際の化学Niめっき析出量の変化を示す。CT-806プロセス(Pd 15mg/L)はCr 300mg/L混入時においても、従来プロセス(Pd 25mg/L)新規建浴液以上の性能を有する。
図4 Cr不純物混入時における化学Ni析出量変化
おわりに
今回紹介した低パラジウム濃度対応キャタライザー、ENILEX CT-806プロセスは、従来プロセスより安価で安定しためっき品の生産を実現できるものである。今後、ターゲット市場での定着を目指し、市場展開に尽力する所存である。
※ 本資料中のNi析出量データは化学Niめっき(ENILEX NI-5)30秒処理時のもの。
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JCUテクニカルレポート 103号 2018年1月